サッカーの約9分の1の広さのコートで、5対5でプレーするフットサル。「人数が少ないため選手一人ひとりの持ち味が存分に生かされ、試合展開も非常に激しい」点が魅力であると、「フットサル同好会All.1」の代表を務める酒井さんは語る。2007年に発足し、日本一を目指して活動してきたAll.1。16年目を迎える2023年、「地域大学フットサルチャンピオンズリーグ」の全国大会で悲願の初優勝を果たした。All.1はどのようなチームなのか、優勝までの道のりはいかなるものだったのか。代表として誰よりもチームのことを考えてきた酒井さんに思いを聞いた。

チームにとっての大きな転換点を乗り越えて

幼稚園から高校まで、サッカー一筋で過ごしてきた酒井さん。フットサルを始めたのは大学生になってからだ。きっかけは、当時のAll.1の監督による誘いだった。「僕が通っていた立命館宇治高校のフットサル部の監督をその方が兼任されていて、サッカー部を引退した時に『フットサルに興味はない?』と声を掛けてもらいました」。実際にプレーしてみたところ、その面白さに引き込まれ、All.1への入部につながった。
そして、3回生となった2022年度の夏には代表に就任。以来、運営面でもプレー面でも中心となってチームを引っ張ってきた。そんな彼から見て、All.1はどのようなチームなのか。「試合に勝つためにはどうすればいいのか、メンバー全員が主体となって考え、真剣に向き合っていけるチームです」。

All.1がこうしたチームになれた背景には、一つの大きな転換点があった。それが、酒井さんの入部のきっかけでもあった監督の退任だ。2022年度からは監督なしで、学生たち自身の手によってチームの舵取りを行っていくこととなった。酒井さんは当時をこう振り返る。「やっぱり最初の頃は戸惑いもあり、大きな大会で負けてしまうことも多くありました。競技面でも運営面でも未経験のことばかりで、うまくいかない時期が半年ほどは続いたかなと思います」。自分たちで全て考えて、決めていかなければならない。監督不在の状況は、大きなハンデのようにも思える。しかしAll.1のメンバーはこの逆境を糧にして、大きな成長を果たしたのだった。「以前は監督の指示に従うだけで、戦術面も任せっきりになっていた部分がありました。それが自分たちで対戦相手のスカウティング(分析)をしたり、それに対応した練習を考えたりするようになり、一人ひとりが試合に向けて割く時間が大きく増えました。それが結果的に、個人のレベルアップにつながったのかなと思います」。

逆転劇によって勝ち取った全国優勝

そうした転換期の中で迎えた「LUXPERIOR CUP 地域大学フットサルチャンピオンズリーグ 2022-2023」。All.1は地域大会で、一部引き分けは挟みつつも、順調に勝利を積み重ねていった。「リーグが進むにつれて、学生だけでやっているという自覚がどんどん強くなり、どんな風に試合や練習と向き合えば結果が付いてくるのか、しっかり考えられるようになっていきました」。試合を重ねるごとにますますレベルアップし、ついには全国大会の決勝戦に出場。大阪成蹊大学フットサル部と優勝を争うこととなった。大阪成蹊大学は、2021年度の地域リーグ戦で敗北を喫した因縁の相手でもあった。試合では大阪成蹊大学が前半に2点を先攻。しかしその後All.1が3得点を決め、激戦の末に見事逆転勝利を収めた。試合を思い返しながら、酒井さんはこう語る。「逆転ゴールが決まったシーンは今でも鮮明に記憶に残っています。このシーズンは、逆転で勝った試合が多くありました。ですので、先制された時はチームとして多少焦りはありましたが、この試合でも最後まで諦めずに戦い抜きました。チームの強みである粘り強さと、ここぞという時の得点力を存分に発揮した試合だったと思います」。自分たちで作り上げてきたチームだからこそ、絶対に負けたくない。その気持ちが粘り強さを生み、全国優勝という快挙に導いたのだ。

チームのさらなる飛躍を目指して

地域大学フットサルチャンピオンズリーグの優勝は一つの通過点。次なる目標は「全日本大学フットサル大会」での優勝だ。その実現により、All.1は真に「大学フットサルで日本一」のチームとなる。「全日本大学フットサル大会でのタイトル獲得を目指すとともに、地域大学フットサルチャンピオンズリーグでも続けて優勝できるような、一過性で終わらない本当に強いチームにしていきたいです」。
より良い成績・結果を手にするために、日々研鑽を怠らないAll.1のメンバーたち。しかし、そうした結果よりも価値あるものが彼らにはあるようだ。最後に、酒井さんの言葉を借りて締めくくりたい。「漫画からの抜粋ですが、前の監督から教えていただいた言葉に、『大切なものはほしいものより先に来た』というものがあります。僕たちにとってほしいものは、大会で良い結果を残すことです。でもそれ以上に、その目標達成に向けて仲間と一緒にフットサルをしている時間こそが、僕たちにとって最も大切なものなのです」。

PROFILE

酒井裕和さん

立命館宇治高等学校卒業。高校まではサッカー部でディフェンスを務め、現在のポジションは前衛のピヴォ。得意の守備を生かし、攻撃の起点を作る。卒業後も、社会人チームでフットサルを続けていくことが目標。フットサルはプレーするだけではなく、プロリーグの観戦も楽しんでいる。

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