仲間と切り拓いた頂点―ウインドサーフィン世界選手権優勝―
2026年4月、トルコで開催されたウインドサーフィンのセーリング世界選手権「2026 MARK WARNER PHOKAIA BEACH RESORT Techno293 & Techno293Plus World Championships」の最上位クラスで優勝を果たした吉田朔大さん。吉田さんは日本ウインドサーフィン協会(JWA)に登録されているプロ選手としても活躍する。大学ではウインドサーフィン同好会に所属し、学業と競技を両立する吉田さんのその道のりに迫った。
琵琶湖を拠点にさまざまな種目に挑戦
ウインドサーフィンに出会ったのは小学校1年生のとき。父親が趣味で行っていたことから、自身もいつの間にかボードに乗るようになっていたという。ウインドサーフィンは帆の扱い方が難しく、乗りこなせるまでに時間がかかるが、比較的短期間で習得したという吉田さん。「幼くて恐怖心もあまりなかったからかもしれません」と振り返る。
小学生のころに徳島県から滋賀県に移り、その後は琵琶湖を練習拠点としてきた。「当時は感覚で乗るスタイルが得意だったので、ウェイブ(波を利用してジャンプやターンの技を競う種目)やフリースタイル(平水面で自由にトリックを繰り出し、その完成度や難度を競う種目)が好きでした」と話すが、コースレース(設定されたコースを回り、速さを競う種目)にも取り組み、小学生から大会経験を積んできた。小学校6年生のときにはジュニア全日本大会に出場し、強化選手に選ばれるなど、早い段階から存在感を示していた。

フリースタイルでプロに
中学2年生のとき、さまざまな種目を続ける中で、競技の方向性を定める必要性を感じ、フリースタイルでプロを目指すことを決意。「ちょうどその時、オリンピック種目からコースレースがなくなってしまうかもしれない可能性が出てきたこともあって、判断を後押しされましたね」と吉田さんは振り返る。
高校は競技に集中できる環境を求めて、立命館守山高等学校に進学した。プロを目指す上で大学受験の心配をせずに競技に専念できる環境であったことと、練習環境に立命館大学のウインドサーフィン同好会の先輩がいて親近感を持ったことが決め手になったという。着実に実績を積み重ねた吉田さんは、ついに高校3年生でプロ登録を果たした。プロになるためにはアマチュア全体の年間ランキング1位を獲得する必要があり、かつ安定した実力が求められる厳しい条件をクリアしての達成だった。

転機となった仲間たちとの出会い
立命館大学入学後は情報理工学部に進み、学業と競技の両立を目指して努力した。空き時間を活用した効率的な練習と計画的な履修により、土日の練習に集中したという吉田さん。「立命館大学はジムの環境も充実しているし、スポーツ全般が強い大学ということもあり、バックアップ体制が整っていて、それが両立の助けにもなりました」と話す。
そして入学後の吉田さんに、転機となる大きな出会いが訪れる。所属したウインドサーフィン同好会で、以前からのウインドサーフィン仲間と再会したり、一緒に練習する仲間が増えたりしたことだ。吉田さんは「それまでは指導者や練習仲間がいない中で、動画や遠征を頼りに独学で練習を重ねていたので、1人での練習が多く、フィードバック不足やモチベーション維持など精神面で苦労していました。でも誰かと一緒に切磋琢磨しあえるようになって、さらに成果につながる環境が生まれました」と振り返る。
仲間たちとの出会いがきっかけとなり、コースレースを再開した吉田さんは、初心者の多い同好会内で経験者としても活躍。指導や意見交換を通じてチーム力を向上させ、大学全体の成績も大きく伸ばすことに成功した。吉田さんの入部前、インカレ団体の成績は10位台だったが、入部後は5位入賞、その後2位、1位と成績を伸ばしていったという。
また吉田さん自身も3、4回生で学生日本代表に選ばれた。「同好会内や、学生日本代表として他校の指導をする中で、自身の技術を言語化することで競技力がぐんと上がりました」と語る吉田さん。仲間の存在が競技への向き合い方を変えた契機となった。

柔軟な姿勢が世界での勝利を引き寄せる
吉田さんは日本代表となったことで、コースレースの世界大会にも過去2度出場。昨年は途中で転落してしまい6位だったが、今年4月のレースでは優勝を果たした。2度の世界戦を振り返って吉田さんはこう語る。「海外選手は体格に恵まれているので、これまで有効だった自分のスタイルが世界では通用しにくいと実感しました。苦戦したこともありましたが、レース中に海外選手の動きを分析し、フォームや乗り方を柔軟に修正することで順位を上げることができました。ハーネスの位置や足の使い方など細かい調整を重ねて、自身のスタイルを適応させていったんです。途中で切り替え、対応できた経験は大きな成長につながったと思います」。

ウインドサーフィン界を先導する存在へ
コースレースで世界の頂点に立った吉田さん。今後は情報理工学研究科への進学を考えており、競技力のさらなる向上を目指す。具体的にはフリースタイルの国内順位を上げつつ、コースレースで国民スポーツ大会に出場することを目標にしているという。また、短期的には、昨年個人2位だったインカレで悲願の優勝を果たしたいと話す。「昨年のインカレでメンタルのコントロールの重要さを実感したので、メンタル面を強化するため大会の動画を活用したイメージトレーニングを続けています」と前を見据える。
「将来は競技をできる限り続け、ウインドサーフィンの競技人口や知名度向上にも貢献し、体験会などを企画してウインドサーフィンの魅力を発信していきたいと考えています」と楽しそうに目を細める吉田さん。ウインドサーフィン界をさらに牽引し、多くの後進を育てる存在となることを期待したい。

PROFILE
吉田朔大さん
徳島県松茂町出身。立命館守山高等学校(滋賀県)卒業。趣味は筋トレとアクション映画を鑑賞すること。
おすすめのサーフィンスポットは、全日本学生ボードセーリング選手権大会(インカレ)の開催地である奥間プライベートビーチ(沖縄県国頭村)。透明度の高い美しい海がお気に入りなのだそう。

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