2026年7月に開催された、世界各国・地域の大学トップ選手が集まり、国際舞台で実力を競う野球大会「ワールド・カレッジ・ベースボール・チャンピオンシップ(WCBC)」。その日本代表チーム(侍ジャパン)の一員として活躍したのが、捕手の西野啓也さんだ。捕手としての実力はもちろん、高い打撃力にも定評がある西野さん。予選ラウンド3戦目では途中出場、大会初打席ながらホームランを放ち、決勝戦でも延長戦でレフト前ヒットを記録。チームの初代王者獲得に貢献をした。持ち前の勝負強さを武器に、プロ野球球団からドラフト指名を目指す西野さんの、その飛躍の原点をたどった。

捕手との出会い

小学2年生で野球を始め、初めて捕手を務めたのが小学4年生。大会前にチームの捕手が不在だったことからコーチに任されたのがきっかけだという。「リーダーシップを期待されたというよりは、他の子より少し野球ができたから任されたという感覚でした。今は捕手というポジションの重要性や面白さは理解していますが、あの頃はあまり楽しいと思いませんでした」と西野さんは振り返る。
とはいえ、野球を始めてから高校卒業までは、大きな挫折や苦労もなく、比較的良い結果を残しながら成長してきたという。出身の高知高校では、1学年上の森木大智投手(現MLBのサンディエゴ・パドレス傘下)の才能に刺激を受けながら、3年間甲子園出場を目指していた。

勝負強さのルーツ

西野さんと言えば、2026年の春季リーグで首位打者を獲得するほど、打撃での評価も高い。西野さんは「持っている運の強さ」をその理由に挙げる。その原体験が高校2年生の秋季四国地区高校野球大会決勝にあるという。2点を先制された直後、自身にとって高校初ホームランとなる逆転3ランを放ち、勝利につなげた。西野さんは「この試合で自分は『持っている』と実感しました。それ以来、勝負どころでは『うまくいくだろう』というあえて強気な感覚を持って臨んでいます」と話す。

苦しい時期を乗り越えて

結局、高校で目標としていた夏の甲子園出場はかなわなかったが、大学で成長し、プロ野球選手になるという新たな目標を立て、立命館大学に進学した。しかしそれまで大きな壁にぶつかることなく野球を続けてきた反動か、ブロッキングや打撃面で苦労したという。西野さんはこう振り返る。「特に捕手としては、ワンバウンドの投球を止める“ブロッキング”が下手だと実感しました。打撃でもそれまでは自分の感覚だけを頼りにしていたことが大学野球のレベルでは通用しなかった。これまで、いかに深く考えずに野球をしていたかを痛感しました」。
さらに、なかなか思い通りにいかない焦りや、人間関係から精神的にも追い詰められ、3回生になる直前には野球をやめたくなるくらい嫌になった時期があったと話す。そんな西野さんを支えたのは、尊敬できる先輩や仲間たちだった。「技術面では先輩や仲間たちから助言を受けながら『どうすればうまくいくのか』をつかむまで数をこなしました。精神面では前年度キャプテンの川本大雅選手('26年食マネジメント学部卒)の存在がものすごく大きかったです。野球をやめようかと悩むほど苦しい時期に相談に乗ってもらい、『変えられない現状にとらわれるのは無駄で、自分が今できることに集中すべき』という気持ちの持ち方を学ぶことができました。また、『チームが日本一になるために西野が必要だ』と真っ直ぐに目を見て言葉をかけられたことが大きな支えになって。今の自分があるのは川本さんのおかげだと思っています」と西野さんは語る。

WCBCの経験から学んだこと

こうして壁を乗り越え、一回り成長した西野さんは、3回生の春にレギュラーを獲得。以降、怒涛の勢いで活躍し続けている。2025年の3回生時は春秋ベストナインに選ばれ、大学日本代表候補合宿にも招集された。2026年も春のベストナインに選出、再び代表合宿にも呼ばれ、ついに侍ジャパンのメンバーに選抜。WCBCでは予選ラウンド3回戦で捕手として守備についた。また、打撃を買われて代打としても出場。ホームランや勝ち越しタイムリーを打つなど、持ち前の勝負強さを発揮した。
大学日本代表としての経験を、西野さんはこう振り返る。「自分自身の課題として強く感じたのは捕手としての総合力。特に試合に捕手として出場した他の選手と比べると、技術だけじゃなく、短期間で周囲から信頼を得る力や存在感の面で差を感じました。なかでも渡部海選手(青山学院大学4回生)の謙虚な姿勢や取り組み方を目標にして、自分の成長につなげたいです」。

更なる飛躍を求めて

WCBCを経た今、西野さんは今後の目標について、チームと個人の両面から語った。「チームとしては、まずリーグ優勝して全国大会に出場したいです。目の前の一戦一戦を大切に戦っていけば、その積み重ねの先に日本一があるはずだと考えています。個人としてはリーグ戦MVPと、プロ野球ドラフトで指名されることが目標です」。特にドラフトでは上位指名を目標に掲げ、より高い舞台で認められることへの強い意欲をのぞかせている。
最後に、野球の魅力について、西野さんはこう話してくれた。「野球の最大の魅力は“ゴールがないこと”です。常に改善や成長の余地があり、その理想を追い求め続けられることが面白い」。
野球へのあくなき探究心を持つ西野さん。日本の野球界を牽引する存在となる日が待ち遠しい。

PROFILE

西野啓也さん

和歌山県出身。高知高等学校卒業。
座右の銘は川本大雅選手からもらった言葉「反骨心」。
憧れの選手は、埼玉西武ライオンズの炭谷銀仁朗選手。 炭谷選手のような抜群の安定感を持つ捕手になることが目標なのだそう。
試合前のルーティンとして、前日に銭湯へ行くことを習慣にしている。

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