合唱の文化が根付くプラハの舞台を踏んで

今年6月、モーツァルトが暮らした町として有名なチェコ共和国プラハに、立命館大学男声合唱団メンネルコール(以下:メンネル)一同の姿があった。それは京都市とプラハの姉妹都市提携20周年記念式典に参加するためだった。メンバーは井上さんと内藤さんを含む現役学生15人とOB約50人。京都市の合唱団を代表して2回のステージを披露し、アンコールではチェコ共和国公立カレル大学合唱団(以下:カレル)との共演を果たした。

井上さんは、大学入学後、オリエンテーション期間に声をかけられ、何気なくついて行った先でメンネルに出会った。流行のJPOPも気どらず歌い、男性だけで奏でられる歌の響きに一瞬で魅了された。地道に練習を重ね、自身でも成長を感じていたが、プラハの公演では、カレルの歌声に圧倒され、大きなレベルの差を感じたという。「自分たちとは異なる言語で、言葉のハーモニーがとても美しかったです。これまで私たちは“楽譜どおりに歌いすぎている” “楽譜の向こう側にあるものを歌いなさい”という指摘をうけてきましたが、どこが悪いのかよくわかっていませんでした。カレルの演奏は、情景や感情までもがしっかり表現されていて、まさにこのことだったのだと感じました」。

一方、中学3年のときから歌い手として頭角を現していた内藤さんは、大学入学前から当時の団長の誘いを受けていた。プラハの公演では一部のフレーズでソロを任され、大舞台で披露できたことは自信になったという。

世の中にない歌をつくりだす

メンネルは今年創部70周年を迎え、記念企画としてオリジナルの合唱曲(委嘱曲)を10年ぶりに発表する予定だ。現在1曲が完成し、最終的には5曲の組曲となる予定である。「新たな始まりへの期待と喜び」という思いを込め、語り、歌い継がれる曲を目指している。この世になかった曲、誰も歌ったことがない曲をつくりあげていく難しさがあり、「繊細に歌うのか、激しく歌うのか」まず歌ってみて、みんなで探りながら形にしていくという。

「自分たちの歌い方がその曲のスタンダードモデルになります。後から自分たちより上手く歌う合唱団がでてくると、メンネルの名誉に関わりますから」今年度から学生指揮者として技術面の責任者に就いた内藤さんは、曲を完成させるプレッシャーを感じている。イメージ通りにならなくてもどかしさも感じつつ、さらなる向上を目指し、プロの指揮者の指導を仰ぎ、自分とは違った角度から曲をとらえてイメージすることを心がけているそうだ。

井上さんは、メンバー不足から執行部の仕事が立て込み、楽譜のチェック不足や寝不足で、満足に練習できない日もあるが、プラハで得た歌い方を演奏会に参加できなかった仲間に還元していきたいと意気込む。

70周年の節目は、12月の定期演奏会。70年間OBたちが奏でてきた旋律を新たな曲と共にさらに美しく奏でてくれるだろう。

PROFILE

内藤雄斗さん

岐阜県立大垣北高等学校(岐阜県)卒業。2014年4月~男声合唱団メンネルコール所属。2016年度より学生指揮者として技術指導を務める。2014年4月から関西ユースの一般合唱団「G.U.Choir」に所属し、第68回全日本合唱コンクール全国大会において大学ユース合唱の部金賞第2位を獲得。2011年~興文混声合唱団に所属

井上晶継さん

西大和学園高等学校(奈良県)卒業。2014年4月~男声合唱団メンネルコール所属。2016年度よりチーフマネージャーとして団を支える。2016年6月に参加した京都市・プラハ姉妹都市提携20周年記念式典出演では副団長として部をまとめあげた。

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