2016年4月14日21時26分、九州を襲った大地震。同時に「何かできることはないか?」と多くの人が立ち上がった。福岡県出身で友人や親戚が九州にいる梶原さんもその一人だ。地元の友人たちが地震直後に支援していることをSNSで知り、九州から離れた地にいる自分でもできることを模索した結果、地震発生の翌日から活動していた立命館アジア太平洋大学と立命館大学の学生団体が発足した“Move for Kyushu”に参加した。

たくさんの笑顔を熊本に届ける“スーパー・スマイル・プロジェクト”

「遠方からの励ましの言葉にも救われた」。地震の1週間前、岩手県出身の友人から東日本大震災時のことを聞き、経済的、物資的な支援以外もあるということを教えてもらっていた。また地震発生後に福岡県の後輩から「先輩は笑顔でいたらいい」と言われていた。笑顔は人に元気を与えるのではと考え、笑顔でメッセージを掲げたたくさんの写真を熊本県に届ける “スーパー・スマイル・プロジェクト”を考案。Move for Kyushuのメンバーも賛同してくれ、活動の一歩を踏み出した。

募金活動の横で協力の呼びかけ、SNSや友人を通じてプロジェクトは徐々に広がりを見せ、学内だけではなく、子どもからお年寄り、全国各地はもちろん海外から3カ月間で1200人の笑顔が梶原さんの元に届いた。当初の目標人数を大幅に超えた協力があり嬉しかったが、同時に自分がやっていることが正しいのか不安になることもあったという。「1人でもいいので笑顔にしたいという気持ちで突っ走ってきたが、実際、現地の人がどう感じるのか不安な気持ちになりました」

そんな時に力強く背中を押してくれたのが母だった。「母はとても前向きな性格。いつも声をかけ励ましてくれて、前向きな自分を取り戻せました」と、いつも支えてくれる母には感謝の気持ちでいっぱいだという。また友人や協力してくれた方の存在も大きな力となった。自分一人ではできなかったプロジェクト、「協力してくれた人に必ず完成した作品を見せて恩返ししないと」という想いで、学校やアルバイトの合間をぬって約1カ月でA1サイズのポスター3枚を作成。コラージュするのが大変だったが、たくさんの気持ちが詰まったポスターが完成したときは感慨無量だったという。

人とのつながりで再確認、きらきら輝く笑顔の魅力

完成品は手渡したいという強い気持ちで、熊本市長にSNSを使い連絡をとった梶原さん。議会の期間と重なり直接市長に会うことはできなかったが、8月29日、秘書の方に渡すことができた。秘書の方の笑顔を見て「やってきたことは間違いではなかった」と安堵感に満ち溢れたと振り返る。しかし一歩外に出れば地震の爪痕が所々に残っている熊本の現状。報道も少なくなり風化していく中、これからも定期的に現地を訪問し、熊本の今を多くの人に伝え続けていきたいという気持ちが強くなった。1200人の笑顔から自身も無限のパワーをもらった梶原さん。その思いを胸にこれからも熊本に「顔晴れ」を届け続けることだろう。

PROFILE

梶原蓮菜さん

福岡県立北筑高等学校(福岡県)卒業。中学時代、東日本大震災時も学校内で募金活動を実施。母が聞いていた洋楽をきっかけに英語に興味を持ち、中学時代はオーストラリア、高校時代はイギリスへ短期留学を経験。大学入学後は難民支援団体PASTELに所属、この8月から代表を務める。現在はアナウンサー訓練所に通い、幼少期からの夢に向かっている。

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