「宇宙での利用を主目的として開発された技術(以下:宇宙技術)は、“難しい技術、地上では応用できないサービス”というイメージがありませんか?でも、ノートパソコンやGPS、低反発枕など多くの宇宙技術が地上の身近な商品やサービスに応用されているんです」。そう話す岡井さんは、昨年、本学のMOTプラクティカムを利用しJAXAのインターンに参加。「JAXAの技術やノウハウを活用(技術移転等)してどのようなビジネスが考えられるか?」という課題をチーム協働プロジェクトとして遂行した。



一緒にインターンに参加した楊さんとともに、1週間かけて約600件あるJAXA特許を調べ、軽量で曲がる「薄膜太陽電池技術」を使用しビジネスプランを作成することに。すでに素材を用いた保温ウエアや電気を用いた加熱ウエアは販売されているが、より汎用性を極め、且つ機能的なウエアにすることを目指した。薄膜太陽電池に的を絞ったのは、非住宅用の太陽光電池が期待されるからだ。「“太陽を着る”をコンセプトとして、軽量で形状変化可能な特性を活かし、将来主要な顧客となる若者の需要喚起を目的に、“アウトドア”に着目しました」。太陽光を電力に変換し、その電力を熱エネルギーに変換することで加熱、冬季中での寒さ対策として役立ち、保温問題及び電源供給を解決する温度調整可能なウエアを提案したのだ。

また、学生がJAXA特許についてどういう印象を持っているか、本学の情報理工学部生約100名にアンケートを実施。「実施前は、個々の研究分野に近い特許を選ぶ傾向になるのではと推測していたが、実際は興味や理解のしやすさで選定して、身近に感じる特許内容が重要視されることがわかりました」。そのことも踏まえ、JAXA東京事務所でビジネスプランを発表した際、楊さんが場を和ませてくれ緊張が一気に解けたと笑顔で振り返る。そのおかげで、楽しく発表することができ、JAXA職員の方々からも好評価を得ることができたという。「今回特許を見直す際に実感した、閲覧時の問題点などもJAXAに提言することができました。一学生の意見ですが、今後の企業との連携に少しでも役に立ててもらえれば嬉しいです」

日々進化していくことが人の「夢」を打ち上げるきっかけに

情報理工学部卒業後、テクノロジー・マネジメント研究科に進み、「船外活動宇宙服の技術スピンオフによる製品開発の成功要因」をテーマに研究を行っている岡井さん。宇宙技術を活用した冷却ベスト開発に携わったJAXAと民間企業の方にインタビューを実施した結果、JAXAは高い信用を維持するために、宇宙航空に求められるような高いレベルの基準を設け信頼性を担保。民間企業は円滑に開発を進めるために、担当者同士が容易に理解できる環境を作るコミュニケーションを重視しているとがわかった。また、両企業の視点で分析した結果、チームとしてのコミットレベルが最後まで維持できていたことが、宇宙技術スピンオフの成功につながることを示した。

「この先、衛星文字表示なども震災時に役立つ宇宙技術の一つだと思います」と述べるように、宇宙を身近に感じ、技術を適切に選択し取り入れる社会環境を望んでいる。「僕にとってJAXAは憧れ。今後は地元で果てしない宇宙の魅力を発信していきたい」。そう話す岡井さんが、宇宙からの無限の可能性を力に「新しい切り口、新しい捉え方」で宇宙をアピールしてくれることに期待したい。

PROFILE

岡井将記さん

奈良育英高等学校(奈良県)卒業。情報理工学部でチーム編成支援システムついて研究し、その作成したシステムが企業経営とどうかかわっていくのかに興味を持ち始め、テクノロジー・マネジメント研究科に進学。 幼少期から空を見上げることが好きで、宇宙に興味をもち、その興味が今の研究に繋がっている。湊 宣明准教授のもと宇宙分野の研究に邁進する傍ら、大学院キャリアパス支援スタッフ、学生コーディネーターも務めている。

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