10月22日、大阪いばらきキャンパスで行われた「AsiaWeek」で、アイヌ民族の文化理解・文化共生を促進し、地位向上を目指す学生団体「ペケレチュプ」は自分たちの活動について発表した。ペケレチュプは、日々、文化継承や観光客誘致などの課題解決に向けたミーティングを重ね、この夏にはオーストラリアと北海道でのフィールドワークを行った。オーストラリアの先住民族、アボリジニは迫害され、政府に保護されてきた歴史がアイヌと似ている点から、そのアボリジニに関する観光政策や文化継承について学ぶためだ。そして、アイヌの文化的価値を学び、現状を知るため、北海道で行われた大地連携ワークショップに参加した。

中曽根さんは、昨年、北海道の平取町が企画した大地連携ワークショップに参加し、アイヌ民族の文化を体験した。アイヌの人の温かさや古いアイヌ独自の文化に触れ、一度はなくなってしまった文化を新たに復元させようとする動きに興味を持ったからだ。アイヌや平取町が抱える課題について話を聞き、学生の視点で何か貢献できないか、と昨年10月、学生団体「ペケレチュプ」を立ち上げた。

中曽根さんはメンバーとともに、オーストラリアで4日間、アボリジニに関する観光ツアーや動物園、博物館で、生活体験をしたり、観光客へのPRの仕方を学んだ。ツアーやお土産品、ギャラリーなど観光業の面で、世界の国々へアボリジニの歴史や文化を伝えていこうとする意思がとても大きいと感じたという。北海道でも海外の観光客へ向けて積極的に情報を発信しようとしているが、アボリジニのツアーガイドの方はアイヌのことを知らなかったため、思っているよりもアイヌの存在が知られていないことを実感した。ツアーは観光客だけでなく、小学生や中高生も郊外学習で訪れており、国の歴史を教えていく中で、アボリジニのことも教えている。日本ではそのような教育ができていないため、少しでも教育の場でアイヌ民族のことを教えることはできないかと思ったという。

一方、北海道での大地連携ワークショップに参加した志水さん。高校でアイヌ民族について学び、大学でアイヌの伝統文化について発信していきたいという思いから活動に参加した。北海道では、平取町でアイヌの伝統工芸品や伝統料理の作り方を体験したり、平取町やアイヌの方々に、アイヌの魅力発信、観光政策の提案を行った。アイヌの方と交流をするまでは、「伝統や文化という大切なものについて、自分たちが観光政策として提案することはおこがましいのではないか」と考えていた志水さん。しかし、アイヌの方に「一緒にアイヌの文化を広めていこう」といわれ、「その文化の継承に自分たちができる範囲で一緒にやっていきたい」と自分の考えも変わったという。

自分たちの活動に感じる責任

文化という大切な重みのあるものに取り組んでいるため、責任も感じるという志水さん。中曽根さんは、「グローバルに活躍しようとしている大学生にもアイヌ民族の存在を知ってもらいたい」と語る。今後は、平取町への観光政策の提案や、大学や附属校などでアイヌの方に講義をしてもらうなど、これからどのようにアイヌ民族の認知度を高めていくかを考えていく予定だ。

PROFILE

中曽根さやかさん

兵庫県立宝塚北高等学校(兵庫県)卒業。
長野明紀教授のゼミに所属し、ダンスの解剖学的視点から、動作解析の研究に取り組む予定。小学2年生からジャズダンスを初め、現在はエアリアルティシュー(天井から吊るした布を使った空中パフォーマンス)も趣味に励んでいる。

志水 妙さん

立命館慶祥高等学校(北海道)卒業。
語学の勉強が趣味で、英語、朝鮮語は日常会話ができるレベル。アジアの文化に興味があり、勉強中の北京語に加え、今後はベトナム語も学ぶ予定。

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