1回生の頃から同じクラスで、同じ国際協力団体に所属していた太田さんと我有さんは、3回生の夏に、今までの自分たちの学びを生かして何か社会に新たな変化を生み出したいと考えた。太田さんは、大学生になってから農業ボランティアを行った経験から、野菜ができるまでの過程や農家の方が育てた野菜への思いを伝えたいと感じ、我有さんは、実家が農家ということもあり、農業の奥深さやすばらしさを知ることで、野菜に愛着を持ったり、食料を大切にできると感じてきた。この2人の思いが合わさり、「農家と学生を繋ぐ」ことをテーマにVegiRitsuが誕生した。規格外や生産過剰で廃棄せざるを得ない野菜を使って学生の不健康な食生活の改善を目指す「菜生プロジェクト」を掲げ、その規格外野菜を利用したスムージーの学内販売と収穫体験・料理教室の実施を提案した。これは、昨年11月の「立命館大学学生ベンチャーコンテスト2015」で野村イノベーション賞を受賞し、それを機に活動は本格的に始動した。

まず、大学教授や学生団体などさまざまな人の紹介で農家を訪問し、出荷作業などのお手伝いをさせてもらうことから始めた。農家の方が実際にどのようなことで困っているのか、少しでも困っている農家の方の助けになれるよう心掛けていたという。

規格外の野菜を使ったスムージーを販売

学内で定期的なスムージー販売を行うため関係部署に提案活動も行ったが、学内の設備を借りることが難しく、学外施設での加工には衛生上の課題が生じるなど、順調には進まなかった。しかし、彼女たちは諦めることなく、実績をつくることが次の機会につながるかもしれないと考え、大学教授の紹介で今年の3月、「京都府庁こだわりマルシェ」に出店した。規格外のものを中心に、にんじん、ほうれん草などの野菜を仕入れ、スムージー90杯を販売した。「とてもおいしい。普段は食べない野菜もスムージーだと飲める」という声を聞き、自分たちの活動の意義を再確認し、学内でも大学生に飲んでもらいたいという思いを強くした。そして、消費者と農家の互いの感謝の気持ちをそれぞれに届けたいとも改めて感じたと振り返る。

農業が抱える問題と学生の食生活を改善したい

9月、「畑から食卓まで~命のリレーを繋ぐ~」と題して、畑で収穫した規格外野菜を調理して食べる料理教室を開催した。農業体験や規格外野菜の調理体験を通じて、学生の食生活改善に繋げてもらうことが目的だった。この他にも1月には、農業に取り組んでいる他団体と共同で、料理教室を開催する予定がある。

「自分が学部で学んできたこととは大きく違う農業への取り組みを経験したことで、普段の生活の中にも野菜や地域のことなどさまざまな気づきが生まれた」という太田さん。我有さんは、「自分から積極的に活動していくことで、いろいろな可能性がみえ、人とのつながりができ、実現していくことができるのだと実感することができた」と語る。困難にもめげず、一歩一歩進んできた2人。私たちが農業、農家のことを考えながらおいしいスムージーを学内で飲める日も近いだろう。

PROFILE

太田綾乃さん

神戸龍谷高等学校(兵庫県)卒業。 1回生では、フィリピンの地域開発などを行う国際協力団体「Ricoppine」に所属し、NGO団体と共同してフィリピンでフェアトレードを学ぶスタディツアーを実施。2回生から国際社会で活躍する人材養成特別プログラム「オナーズプログラム」にも参加。2回生の夏から1年間、デンマークへ留学した経験を持つ。

我有才怜さん

育徳館高等学校(福岡県)卒業。 1回生では、国際協力団体「Ricoppine」に所属。2回生では「オナーズプログラム」に取り組み、中国での海外研修にも参加。4回生では、熊本地震の復興を支援する「くまだす+R」にも所属し、熊本県西原村への農業ボランティアの活動を行う。

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