スポーツへの強い思い

「トレーニングコーチを目指す」菊池さんがそう決意したのは、大学を卒業してから約1年半後のことだった。法学部で学び、硬式野球部で部活動に打ち込んでいた学部生当時は「スポーツを仕事にするのは難しいのではないか」という思いもあり、一般企業に就職した。しかし、小学生から続けてきたスポーツから離れ、「なぜ、好きだったスポーツの道を離れてしまったのか」という思いが募っていった。プロ野球選手になることはできないが、高校時代にお世話になったトレーニングコーチのようにスポーツに携わることはできると考えた。周囲からはさまざまな声もあったが、「人生は1度しかない。後悔はしたくない」と決断して退職し、立命館大学スポーツ健康科学研究科へ進学した。

現場での経験

大学院に入学後は、学外のアスリートジムでストレングス&コンディショニングコーチ※(以下:S&Cコーチ)のインターン生として週に2、3回アスリートへの指導を行った。競技や種目によって、選手の性格傾向や体の強さの違いも考えながら指導をする現場での仕事は大きな学びとなったと振り返る。大学院2回生からは、中学校のサッカー部でS&Cコーチ、高校の野球部でもコーチの補助として活動している。中学生はまだ集中力が持続しなかったりトレーニングへの意欲も低く、最初は指導するのも苦労した。そこで、興味を持ってもらうために話の仕方を工夫し、トレーニングメニューに競争やゲーム形式を織り交ぜることで、集中力を保って楽しくトレーニングしてくれるようになったという。
※ストレングス&コンディショニングコーチ:怪我の予防やパフォーマンスや基礎体力の向上を目的とした、プログラム作成や指導を行う

菊池さんは小学生から成人のアスリートまで、幅広い年代の指導を行ってきた。同じことを指導しても年代が違うと反応も違うため、それぞれの道筋に合わせた指導をしなければならないことに楽しみがある一方、コーチングの難しさもある。自分が学んできたことを選手にうまく生かしてもらうにはさまざまな手段を持っておくことが重要だと日々感じている。試行錯誤を繰り返しながら成長を続ける菊池さん。「競技において最も重要なのは技術で、トレーニングが生きてくるのはわずかかもしれない。それでも一緒にトレーニングし、努力をする姿をみているから、選手が晴れ舞台で活躍してくれることが一番嬉しい」とコーチとしての喜びを語った。

これまでの学びを地元に還元したい

選手や現場の指導者が必ずしも専門的な知識を持っているわけではないため、現場では研究のときと同じような言葉を使っても伝わらないこともある。「研究と現場の架け橋となり、選手やチームの個性に合わせた分かりやすいコーチングをしていきたい。そして選手の競技力の向上につながってほしい」とこれからの目標を話す。大学院修了後、菊池さんは出身地である北海道でS&Cコーチとして高校生の部活動やアスリートにトレーニング指導を行う。これから多くのアスリートやチームの支えとなり、活躍してくれることだろう。

PROFILE

菊池 諒さん

立命館慶祥高等学校(北海道)卒業。小学生のときから野球を始め、大学では、硬式野球部の外野手として野球に打ちこむ。大学院では岡本直輝教授の研究室に所属し、「野球の内野手におけるゴロ処理測定評価法の検討」について研究を行った。趣味は野球やサッカーなどのスポーツ観戦で、その他に釣りをすることもある。

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