日々、薬剤師国家試験の勉強と研究に打ち込む夏目さんは、昨年から同じ研究室の仲間が取り組んでいた「薬物乱用防止キャンペーン」に興味を持っていた。初めて参加したのは2016年2月、滋賀県守山市の「ピエリ守山」で実施された薬物乱用防止キャンペーン。びわこ成蹊スポーツ大学・滋賀大学・立命館大学薬学部の学生が集まり、店内にブースを構え、薬の正しい知識や使い方を劇やクイズなどで発表。夏目さんも着ぐるみでイベントを盛り上げたり、子どもたちに軟膏の練りかたを教えたりした。

このキャンペーンに初めて参加して、医薬品の正しい知識と使用方法を理解してもらいたい気持ちが増したという。「医薬品は病気やケガの治療をするためのもの。1回に飲む量が決まっているので、無視してたくさん飲んだりするのも危険な行為です」。麻薬、覚せい剤を続けて使用しているうちにやめられなくなることが薬物の恐いところ。「興味本位で薬物に手を出して、自分の意志で薬物の使用をコントロールできなくなってしまうのが依存症であり、一回でも使用することが何よりも怖い点です。今回のキャンペーンをきっかけにして、薬物乱用問題について考えてほしいです」。薬物乱用の低年齢化が進んでいる昨今、危険だということを理解している人が子どもたちに呼びかけることが大事だと強く思った。次回のキャンペーンは6月。今回の経験を活かして、もっと多くの人に薬とうまく付き合ってもらいたいという思いが増した。

夏目さんが薬剤師を目指し始めたのは小学生のころ。「小学生のときに入院したんですが、不思議と入院生活が嫌じゃなくて…。きっと先生や看護師さんがやさしく接してくれたおかげだと思います」。入院を機に医療関係に興味を持ち、その後なぜこの薬を飲むと病気が治るのか?なぜ痛みが和らげられるのか?など薬に興味が移り、身体や命に影響を与える薬を扱う仕事に携わっていきたいと心に決めたという。

キャンペーンで来場した子どもたちと一緒に作業し、同じ時間を過ごす。すると夏目さんはあることに気づいた。「わかりやすく伝えることの難しさを感じました。姿勢を低くして子どもたちと同じ目線で話すと、最初は緊張していた子どもたちも心を開いて歩み寄ってくれるんです」。それは、医療現場における患者さんと薬剤師の関係も同じではないかと感じた。

「どんな患者さんでも抱えている問題がある。それを把握し、コミュニケーションを通じて、患者さんと不安な部分を少しでも共有し合える薬剤師さんになりたいですね」と、夏目さんは周りを和ませてくれる柔らかな笑顔で夢を語ってくれた。

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