寺下さんが英語力向上を目指しはじめたのは大学入学後のこと。それまではサッカーに熱中するスポーツ少年だったという。

小学2年からサッカーを始め、中学時に京都府代表としてフランス遠征も経験。サッカーに没頭するために強豪校である鹿児島実業高等学校に進学するも、2年時に怪我を負う。リハビリをしつつ最後まで在籍したが、悩んだ末に大学ではスパイクを脱ぐことにした。「あの頃は文武両道を目標に頑張っていましたが、サッカーのほうが優先度は高かったですね。なのでフランス遠征の時も、試合後に相手チームの選手と交流する際会話に苦労したが、英語の勉強は後回しになっていたんです」

大学進学後は、経営学部国際経営学科に在籍したので、帰国子女や高校生の時にすでに英語に特化した授業を受講している友人が多く、自分の英語力に危機感を感じていたという。そんな中、2014年8月に開催された世界中の名門大学の学生と専門家が一堂に会する、アジア最大規模の国際学生会議「HPAIR」に参加した寺下さんは自分の英語力の現実を思い知る。「友人との会話は通用するが、議論にでてくる英語が理解できない…」。今までは受験英語で通用していたが、実践的な英語の重要性を感じた。

英語力向上を目指して

「自分の意見を言えないという悔しい思いは二度としたくない」。その気持ちが、寺下さんを奮い立たせたのだろう。可能な限りネイティブの授業を受講し、授業以外でも積極的に先生に話しかけるなど、大学の授業や環境を活用し、英語に慣れることに時間を費やしたという。結果、2回目に参加した「HPAIR」では、意思疎通を図れるまでレベルアップし、積極的に議論に参加できたという。

その後、3回生時にトビタテ留学JAPAN※の2期生に選出され、BSA(Business Studies Abroad)プログラムで、約8カ月間イギリスに留学。留学先では、専門の国際経営や経済学などについて学び、新たな知見を得たという。また、4回生時には、英語でのプレゼンを必須とする「ジャパンビジネスケースコンペティション」に学部の友人と参加し、個人に与えられるベストスピーカー賞を受賞。英語力が周囲にも認められたと感じた瞬間だったと振り返る。

※2014年からスタートした官民協働で取り組む海外留学支援制度

留学やさまざまな国際経験を通じて英語力に加え、視野も広がり世界基準で物を考える、国際感覚を養うことができたという寺下さん。「語学に対する苦手意識を軽減してほしい」「留学を後押ししてくれた海外留学奨学金を多くの学生に周知したい!」と思い、自身が中心となり関西圏の他大学のトビタテ生とともに、説明会及び留学計画書の相談会を開催。依頼があれば中学・高校での講演会も行っている。また留学のため就職活動の開始が遅れた自身の経験を生かし、就職活動に悩む学生を少しでもサポートできる存在になりたいと、外資系企業の内定者および就職希望者のグループを立ち上げ、相談会や交流会も実施している。

大学生活の大部分を占めた英語力向上の取り組みや留学は、自分を表現する幅を広げることになったのだ。大学を卒業してからのことを尋ねると、力強くこう答えてくれた。「世界に触れて積極性を高め、大きく成長できる留学。このことを多くの学生に伝えるために仕事と両立させていくつもりです」

PROFILE

寺下 穂さん

京都府出身。鹿児島実業高等学校(鹿児島県)卒業。2014年2月、EDGEプログラムでシリコンバレー企業でのインターンシップを経験。2015年10月~2016年6月、BSAプログラムでイギリスのレディング大学へ留学。3回生時は琴坂将広准教授のゼミ、4回生時には松浦総一准教授のゼミで国際経営について学ぶ傍ら、経営学部父母会賞を受賞するなど、論文執筆にも力を入れた。4月からは外資系企業で働く予定。

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