2016年2月、JICAのボランティア事業、青年海外協力隊として、1カ月間ラオスで子供たちに柔道の指導を行った射手矢さん。もともと海外に興味があったが、部活動に打ち込んでいたため留学はできなかった。青年海外協力隊で発展途上国の子供たちに柔道を指導することができると知り、自分の得意分野を生かして海外で活動してみたいと考え、応募を決めた。

スポーツは言葉が通じなくても体の動きで伝えられる

他大学の学生らとともに、ヴィエンチャンにある武道館や3つの道場で小学生から高校生が所属するクラブチームの指導を行った。また、高校の部活動で指導したり、道場の子供たちと朝練をしてトラックを走ることもあった。ラオスの公用語はラーオ語で、言葉で伝えることに苦労したが、スポーツの指導では体を使って伝えられることがあると実感したという。

子供たちと全力で向き合う毎日

最初は慣れない土地での活動に疲労を感じることが多かったが、日本の柔道を教えているうちに、日本人だからこそ教えられることがあるとやりがいを感じたという。柔道を人に教えるのは初めてだったが、柔道の楽しみ方を伝えられるよう、ただ投げるだけでなく、重心の移動の仕方など細かい指導も心がけた。幅広い年齢の子供達を指導するため、年齢別に練習内容を決めたり、子供が楽しめるウォーミングアップを自分で考え実践した。積極的で好奇心旺盛な子供たちに応えるため、射手矢さんも笑顔を絶やさず全力で指導にあたり、徐々に打ち解けることができたという。

自分自身を見つめ直す機会

日本では相手と競い合うことしか考えてなかったが、1カ月間の派遣で勝負から離れて柔道について伝えようとするうちに、自分自身の柔道を見直し、向き合うことができたという。そして、自分からもっといろいろなことに関心を持ち、チャレンジしていこうという意欲につながった。現在は、6月の団体戦、「平成29年度全日本学生柔道優勝大会」、9月の個人戦、「平成29年度全日本学生柔道体重別選手権大会」での上位入賞を目指し、毎日練習に励んでいる。ラオスで出会った元気な子供たちを思い出し、「自分も頑張ろうと思えます」と笑顔で話す。

多くの人に柔道の楽しさを知ってほしい

大学卒業後は、中学からの夢だった語学留学をして、留学先でも柔道を教えていきたいと話す。柔道家である憧れの父の存在や青年海外協力隊で柔道指導を行う兄の影響も大きいが、ラオスでの活動を通して、教えることの楽しさややりがいを感じ、「多くの人に柔道を教えたい」という思いが芽生えたという。「柔道は厳しい、痛そうというイメージがあると思いますが、“柔道の楽しさ”を教えていきたいです」。射手矢さんの第2の柔道人生が、卒業後に始まる予定だ。

PROFILE

射手矢味香さん

東京都立駒場高等学校(東京都)卒業。土田宣明教授のゼミに所属し、スポーツ心理学の研究を行っている。小学4年生から柔道を始め、中学では陸上部に所属。高校から再び柔道に打ち込む。2016年9月に開催された「第28回 関西学生女子柔道体重別選手権大会」では3位となり、「平成28年度全日本学生柔道体重別選手権大会」への出場を果たした。2018年春よりカナダへ留学を予定している。

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