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セミナー報告:ミクロネシア連邦の食生活―詳細な食事調査―

79()、衣笠キャンパス恒心館において標記タイトルの公開講演会を行った。講師は、鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの山本宗立氏である。

本講演では、ミクロネシア連邦にみられる食生活の動向について発表された。ミクロネシアでは、1960年代にアメリカ合衆国農務省が補助給食プログラムを実施して以降、「近代的」な食事に置き換わっていったとされる。すなわち、コメや小麦粉、砂糖、脂肪分に富む食品や輸入加工食品が増加したのだという。そして、その傾向は、糖尿病や高血圧、心臓疾患などの健康問題を深刻化させているとしばしば指摘されている。それにもかかわらず、住民の食生活についての研究蓄積は限られていることから山本氏は、2012年以降、ミクロネシアの島嶼部で食生活についての調査を行ってきた。 

本セミナーでは、山本氏自身が実施したピンゲラップ島およびピス・パネウ島における調査に基づいて住民が何を食べているかを紹介した。山本氏によると、輸入加工食品の導入は部分的であるという。両島ともにいまだに島内あるいは島周辺で獲得できる作物・海産物を高頻度に利用しており、調理方法に関するノウハウも次世代に継承されている(インドクワズイモの毒抜き知識など)。「近代的」な食事の導入は部分的であり、基本的には伝統的な食事が行われているという。

その結論に基づき学生による質疑が行われた。その中では、健康問題が本当に深刻化しているのかという質問が出された。それに対して、山本氏は、社会問題はしばしば援助を獲得するためのレトリックとして使われる場合があり、健康問題はもしかしたら誇張されているのかもしれないと返答した。 

本セミナーでは20名ほどの学生が参加した。

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