修了生の声

哲学専修

石川 将来 さん

前期課程 高度技能展開コース 2014年修了
毎日新聞社 大阪本社社会部

大学院で培われた「哲学的思考」を活かして記者の道へ

立命館大学文学研究科の志望理由と研究内容を教えてください。

立命館での学部4年間の学びを通じ、哲学の奥深さ、魅力にどっぷりはまり、「もっと勉強したい」と思うようになりました。学部時代からの指導教員である加國尚志先生の下で、自分の選んだテーマをとことん追究できる自由な気風も魅力でした。文学研究科では、現代の大量消費社会を独自の視点で鋭く分析したフランスの思想家・ボードリヤールの著書『象徴交換と死』などを研究。高度な消費・情報社会に生き、一見すると豊かな時代にいるはずの私たちがなぜ、欠乏感や暴力、テロリズムと無縁でいられないのかを洞察し、今を生きる術を探りました。

現在の進路を選択した理由とお仕事の内容を教えてください。

学生時代に、非行少年の立ち直りなどを支援するサークル団体で活動したことで「一度、道を踏み外しかけた人たちが何度でもやり直しの効く社会になってほしい」との思いを深めました。社会認識を変えるには、不特定多数の心に情報、メッセージを届ける必要があると感じ、マスコミの世界へ入りました。もともと文章を書くのが好きだったため、私は手段として新聞のような活字を選びました。今は民間人、行政、政治家などを取材し、それを記事化する毎日です。初任地でもある被爆地・広島で大きな土砂災害が発生したことが契機となり、「戦争と災害の記憶の継承」が重要な取材テーマの一つとなりました。2021年度は大阪府庁の取材を担当中。知事会見に出席し、府の新型コロナウイルス対策などを追っています。

文学研究科での経験や培った力が、現在の仕事(研究)に活かされていると感じることがあれば教えて下さい。

哲学に批判精神は欠かせません。自分の頭で思考し、常識を疑うことを徹底して鍛えられました。一方で、記者の大きな役割の一つは「権力の監視」です。行政や政治家はおうおうにして自分たちに都合の良い情報を多く流しますから、記者の「疑う視点」が重要になります。大学院で培われた哲学的思考は、ジャーナリズムに必要な批判精神に通底していると感じます。また、大学院では論文を書くにあたり、扱う文献の量も飛躍的に増えました。じっくり文献とにらめっこし、地道に理解を深める日々を送った影響で、今も私が取材で重宝するのは図書館です。歴史に埋もれた過去の出来事を掘り起こす作業では古い資料に目を通し、記事化のきっかけにしています。文学研究科での学びで身につくこうした忍耐力は、私のような新聞記者以外の仕事でもきっと生かされると思います。

受験生へメッセージをお願いします。

学部から大学院にかけての進路選択には、私もかつてないほど頭を悩ませました。「文系の院生は就職出来ない」という根も葉もない噂もありますが、全く関係ありません。各分野のエキスパートが集結する大学などの研究機関は本当に贅沢な場です。特に大学院は学部以上に教授や他の学生との距離が近く、高度な議論が体験出来る場だと思います。ただし、進学後も研究職に残るのか、修士課程を目標年数できっちり修了し社会に出るのか、一定のビジョンを持ったうえで進学することが必要です。「社会に出る同級生の何倍も多くのことを吸収してやる」と気概を持って文学研究科に足を踏み入れたのなら、きっと濃密な大学院生活が送れると思います。頑張って下さい!

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