修了生の声

西野 拓哉さん 日本史学

西野 拓哉さん

前期課程 研究一貫コース 2018年修了
大阪税関 職員 関西空港税関支署
特別通関部門 勤務

大学院でしか身につけられないスキルや
視野の広さがあると思う

貿易の仕事がしたくて税関へ。ものの流れから多くのことが見える

大阪税関の職員として関西空港で働いています。税関といえば、違法薬物や銃器の密輸出入取締の場面がメディアでよく取り上げられますが、それが仕事のすべてではありません。外国からの航空貨物が適正な手続きを経ているかを審査し、関税などを適正に徴収するという、貿易の一部を担う仕事でもあります。私は大学院で国際貿易の歴史に関する研究を行い、その中で通関士の資格も取得していました。貿易に関わる仕事として税関を志望したわけです。

関西空港税関支署での勤務風景

関西空港税関支署での勤務風景

通関時の審査では、商品の輸出国だけでなく、原材料の生産国も確認します。大学院での研究を通して学んだ貿易に関する知識、国際情勢の歴史的知識があることによって、私はそこに歴史のなごりや現在の国際情勢を見ることもできます。例えばフランスのブランド衣類の原材料がかつての植民地であるモロッコ産やチュニジア産であること、同じくフランスの植民地だったベトナムにはカフェ文化が今も根付いているのでコーヒーの輸入が多いということ。ものの流れ方ひとつで多くのことに気づくことができるのです。大学院で培った興味や関心が、仕事に対するモチベーションや熱意、さらに言えば仕事をする意味の根幹にふれる部分にも影響を与えている面があると感じています。

東南アジアのマングローブ林にて
東南アジアのマングローブ林にて
マレーシアのバトゥ洞窟にて<
マレーシアのバトゥ洞窟にて
研究や学会発表のため頻繁に訪れた台湾。今では「第2の故郷」に

大学院に進学したのは、学部時代の研究を続けてみないかと先生から声をかけてもらったことがきっかけでした。学部での研究は「日本の台湾への経済的進出」。日本統治時代の台湾に日本の国営企業が作られたことによって、台湾はどのように発展したかというものです。ちょうどそのころ世界地図を見て、台湾が日本の領土だとしたら、東南アジアに進出する際には非常に良い位置だなあということを感じていたので、日本が台湾を拠点にして、さらに南へと進出していく歴史的経緯も研究してみようと考えたのです。

大学院時代は、資料調査や学会発表などで年に数回は台湾に行っていました。台湾でも日本の統治時代に関する研究を深めたいという機運があったので、現地の学会に呼ばれて報告をしたこともあります。台湾の研究者が、当時を非常に公平に評価する姿勢であったことが印象的でした。台湾政治大学の講師の方が立命館にいらして、日本と台湾の歴史に関する研究プロジェクトが立ち上がり、現地調査に行かせてもらったこともあります。研究目的での渡航では観光をする余裕もないので、別にプライベートでも訪台するようになり、合計で10回以上は行きました。今も台湾にはよく行きます。すっかり第2の故郷のようになりました。

台湾政治大学での学会報告

台湾政治大学での学会報告

薬物密造の歴史的背景を解説したレポートで高い評価

単位や就職活動など研究以外のことに気持ちや時間をとられる学部時代と違い、大学院では、興味を持ったことを落ち着いて学び、研究することができます。どんな分野の研究でも、こういった環境に身を置いてみる経験を通してしか身につけられないスキルや視野の広さがあるのではないでしょうか。私は自分の経験からそう感じています。

コロナ禍で空港を利用する旅客が激減した時期、大学院で身につけた研究の手法を使って、海外の薬物の密輸に関するレポートを作成しました。薬物の密造が、どこで、なぜ行われるようになったかについての歴史的背景を解説したものです。このようなレポートを書く職員は珍しいらしく、密輸という犯罪行為を歴史的視点から見ることについても非常に興味深く受け止めともらうことができて、職場で高い評価をいただきました。

今後もさまざまな税関業務を経験して専門知識を身につけ、将来は、円滑な輸出入手続を実現する日本のシステムを発展途上国へ提供するプロジェクトなどに関わりたいと考えています。そのような貢献を通して発展途上国との貿易量が増え、経済関係が緊密になることが、日本のメリットにもなると考えています。

一覧へ戻る