修了生の声

立野 航平さん 教育人間学

立野 航平さん

前期課程 高度専門コース 2018年修了
学校法人両洋学園 京都美山高等学校
地歴公民科 常勤講師

生徒の何気ない笑いやかなしみなどの「人間らしさ」を、洩らすことなくすくいとりたい

通信制高校で1クラス60人の生徒をサポート

通信制高校の教員として1クラス60人の担任をしています。いろんな理由から通信制高校を選んだ生徒たち。それぞれのペースで頑張る彼らが無事に卒業できるよう、担任としてサポートしています。

登校日が少ないからこそ、生徒や保護者と密に連絡をとるようにしています。通信アプリを使った生徒面談や電話連絡はつい長話に。何気ない会話から生徒の様子もわかり、保護者の話から本人の悩みが見えてくることもあるので、ぼくにとってとても大切な時間です。

担当科目は「現代社会」と今年度から開講された「公共」です。自宅で受講できるオンデマンド型のビデオ教材を作成し、学校から配信するライブ授業も行っています。社会の出来事や問題を「自分事」として学んでいけるように、日常の身近な例から考えてもらっています。

生徒には、どんな進路を選ぶにせよ、人生の中で何かを深く考えなければいけない時に、そこから逃げない人になってほしいと思っています。見て見ぬふりをするのではなく、自分のことを丁寧に考えられるようになってほしい。そう考えています。

最も仲のいい同期の同僚に撮ってもらいました
最も仲のいい同期の同僚に撮ってもらいました
友人に撮ってもらった父と私の何気ない日常の記念写真
友人に撮ってもらった父と私の何気ない日常の記念写真
思いや悩みを話してもらえた時、教育人間学専修で学んでよかったと思います

立命館大学の文学部人間研究学域に入学し、専攻選択に悩んだ末、哲学・倫理学専攻で卒論を書きました。しかし教育人間学にも興味があったので、大学院は教育人間学専修で学ぶ選択をしたのです。教育人間学専修は教員養成のプログラムではなく、「人間とは何か・教育とは何か」哲学や臨床心理学からヒントを得ながら考える専修です。「授業することはそもそもどういうことか?」「あいさつするとは?」「かなしみとは?」など、よくある教育議論では見逃しがちな、人間の生きるという営み一つひとつを丁寧に考えることがとても楽しいと感じました。今、悩みを抱えながらも登校してくれる生徒が「おはよう」と言ってくれる、その一言には単なるあいさつ以上の意味があると理解できるのも大学院で学んだからです。

よくホワイトボードを使って、自分の考えをまとめていました。

よくホワイトボードを使って、自分の考えをまとめていました。

何気なく笑うその時や顔色を曇らせるその時に感じる「人間らしさ」のようなものを、洩らすことなくすくいとる。これを大切にすることも学びました。生徒や保護者がしてくれるお話に耳を傾け続けていると、「実はね…」といろんな思いや悩みを話してもらえることがあります。そんな時、教育人間学専修で学んできてよかったと思います。生徒や保護者の置かれた状況や気持ちをもっと知りたいと思い続けられるのは、私自身が「人間らしさ」についてずっと考えてきたからだと思います。

修士論文では「懐かしむこと」について考えました。卒業式などで「これまでよく頑張った。『次も』頑張れ」という言葉を教師が生徒に送るとき、余韻に浸りたい生徒を置き去りにしてはいないだろうか?と考え、ジャンケレヴィッチという哲学者の思想をもとに教育の現場を考えてみたものです。執筆中の友人との議論は忘れられません。カラオケでマイクを回して学会の真似事のようなことをしながらの議論。「なんでこんな表現しているの?」「これはどういう意味?」と言ってくれることで、毎回色々なことに気づかされました。

生徒や保護者からより信頼してもらうため、心理学を学ぶことも検討中

進路指導に役立てたいと思い、キャリアコンサルタントの資格を取得しました。資格勉強の中で、目の前の人が大切にしていることに関心を向け続け傾聴する姿勢を学びました。今は臨床心理士に興味を持っています。生徒や保護者への対応で「これで良かったかな」と思うことが多く、もっと知識を身につけたいと思ったからです。今一度大学院で学ぶ必要があるので非常に悩むところですが、学ぶ過程で得られるものもあると思うので、私も逃げずに考えてみたいと思っています。

一覧へ戻る