修了生の声

田中 崚太郎さん 西洋史学

田中 崚太郎さん

前期課程 高度専門コース 2021年修了
群馬県立高等学校 地理歴史科 教諭

研究漬けの生活。論文を書くことでしか味わえない貴重な2年間を経験

周囲にまったく知り合いがいない状態で、研究に苦闘

世界史が好きで大学に進学し、将来は世界史を生業にしたいと考えて、他大学から立命館大学文学研究科への進学を志望しました。私はビザンツ帝国に関する研究を行っていたので、学部時代の指導教授から、専門の先生がいらっしゃる立命館ならよりレベルアップできるとすすめられ、文学研究科の小林功先生のもとで研究することにしたのです。

修士論文のテーマは「ビザンツ帝国の中央政府と地方住民―8世紀後半から9世紀前半の小アジアの事例を中心に―」でした。『聖フィラレトス伝』を中心に、いくつかの資料を、ギリシア語の英訳で、重要な語句は原典にも当たりながら読み込み、オリジナリティのある仮説を導き出す。論文を書くことによってしか味わうことのできない経験でした。貴重な2年間を過ごしたと感じています。

研究で用いた資料『聖フィラレトス伝』
研究で用いた資料『聖フィラレトス伝』
学位授与式で小林先生と
学位授与式で小林先生と

大学院ではひたすら研究漬けの毎日でした。私の出身は関東、その後東北の大学を卒業して、コロナ禍も重なり、周囲にまったく知り合いがいない状態。研究の内容も難しく、一人で研究を進めていると自分のだめなところばかり目について、文献を読むことさえできない時期もありました。1年目の秋に「もうやめよう」と思って小林先生に相談したこともあります。その時小林先生から「少しずつでもいいからやってみよう」と優しい励ましをいただいたことで、それから自分の中で少しずつペース配分ややり方がつかめるようになっていきました。小林先生には、大学に行けない時も、美味しいお店やスーパーなどを親切に教えていただくなど、生活面での支援もいただいたことに本当に感謝しています。

生徒に興味を持ってもらえる授業を目指し、教材研究に力を入れています

今は地元に帰り、公立高校で地理歴史科の教諭をしています。大学院時代から高校の非常勤講師も務め、専門性を活かせる仕事として志望しました。今年度はさまざまな都合で世界史ではなく地理を担当することになりましたが、生徒に興味を持ってもらえる授業を目指して、スライドや配布プリントも作成するなどの教材研究に力を入れています。加えて、学級副担任として学校行事に関わり生徒への指導を行うこと、分掌として教務の仕事を担当し、学校全体の運営に携わること、バスケットボール部副顧問として練習や遠征に参加して指導を行うなど、たくさんの業務があります。

バスケットボールの経験はないので、主に精神面でのサポートをしたり、主顧問の先生のサポートを行ったりしています。週末も部活動の試合や遠征があるので、基本的に休みはありません。バスの手配、宿の手配なども行っています。夏休みもずっと部活動の指導でした。

それでも、チームが県でベスト4に入った時は本当に嬉しかったですし、試合のたびに生徒がどこまでやってくれるのかが楽しみです。バスケットボールをこんなに面白いと思える自分に驚いています。仕事を始めてまだ半年。大学院時代と生活は一変しましたが、それにも慣れることができました。

研究と生活の両面で支えていただいた小林先生のような教員になりたい

今担当している地理は専門外の教科、顧問を務めているバスケットボールも未経験のスポーツで、現状自分の専門分野に関する知識や経験を活かせる機会はありません。しかし今は勉強の時だと考えています。地理を担当することによって、地理と歴史のつながりについて考える機会を持つことができ、社会科という教科に対する見方の幅が広がりました。将来自分が世界史を担当する時は、今の経験を活かして、これまでよりも横断的な視野で教えることができると思います。

立命館大学文学研究科の魅力は、高度で最先端の研究機関であり、各分野の最前線に立つ先生のもとで研究を行えることだと思います。一方で、私は小林先生の人間性にも感銘を受けました。コロナ禍にあって地縁のない京都で研究と生活の両面で支えていただいたこと、採用試験の推薦書をお願いした時も「何枚でも書くからね」と、私の気持ちをくんでくださったことが忘れられません。私もいつか、生徒にとっての小林先生のような教員になりたいと思っています。

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