修了生の声

中谷 可惟さん 英語圏文化

中谷 可惟さん

前期課程 研究一貫コース 2019年修了
フリーランスグラフィックデザイナー

ジャズ批評研究からグラフィックデザイナーへ。
学びを活かして海外からの依頼に応える

ジャズ雑誌の批評について研究するため、アメリカのジャズ研究所で調査

立命館大学文学部国際コミュニケーション専攻の学生だった時、学問分野ありきではなく、自分の興味でえらんだテーマを、文学系、歴史系両方の先生に指導していただいて卒業論文を書きました。この学際的な研究手法に魅力を感じ、さらに研究を深めたいと考えて大学院に進学しました。

研究していたのは、アメリカのジャズトランペット奏者、マイルス・デイヴィスのあるアルバムが、当時のジャズ雑誌でどのような言葉や表現で批評され、その批評が時代によってどのように変化していったかです。研究に必要な歴史資料は、ほとんどがアメリカの大学図書館にしかありませんでした。そのため、博士課程前期課程2回生の夏にラトガース大学ニューアークキャンパスにあるジャズ研究所を訪問し、1950年代のジャズ雑誌などを読み漁りました。スマートフォンのアプリでスキャンしたのはおよそ3000ページ。ベテランの職員の方に快く受け入れていただき、目星を付けていたもの以外にも、関連のありそうな資料を提案していただくなど大変親切に助けていただきながらの作業でした。

ラトガース大学ジャズ研究所で使用した資料
ラトガース大学ジャズ研究所で使用した資料
ラトガース大学ジャズ研究所で
ラトガース大学ジャズ研究所で

インターネットのない1950年代当時は、ジャズについて書かれたメディアといえば雑誌を中心とした紙媒体だけ。研究を通して、そこに書かれている言葉の力、批評の影響力の大きさをまざまざと感じました。今「名盤」とされるアルバムも、あれらの批評がなければ今のような形で残されてこなかっただろうと思います。

大学院で鍛えられたことが、デザイナーとしての仕事の大部分を占めている

今はデザイナーとして活動しています。もともとデザインやものづくりが好きで、頼まれて友達のバンドのロゴを作ったり、ポスターを作ったりしていました。あくまでも趣味の範囲です。しかし、研究の中で古い雑誌を見ていると、書体やレイアウトにひかれたり、デザイン的な目線でも強く興味を持つようになっていきました。また、大学院生としての生活の中で、英語を読んだり書いたりすることにも抵抗がなくなっていました。そこで、デザインと英語を結びつけて自分なりの活動をしようと、博士課程後期課程を退学してデザインの道に進むことにしたのです。

自宅でのデザイン作業風景

自宅でのデザイン作業風景

デザインを本格的に学んだことはなかったので、アメリカのオンラインの教育機関で学び始めました。学校に通うよりずっと安価で、自分に必要なコースだけを自由に選択できるものです。並行して、海外のクラウドソーシングにデザイナーとして登録。初めての仕事はドイツのパッケージデザインの仕事でした。

今も京都に住みながら、ヨーロッパ、北米を中心としたお客様のご依頼で、イラスト、パッケージデザイン、ロゴデザイン、インフォグラフィックなどの制作を行っています。

大学院で鍛えられた、資料を探し、読み込んで、そこから新しいアイデアを練るという習慣は、グラフィックデザインという仕事の大部分を占めていると日々実感しています。デザインを考える前に、何のためにそれを作るのか、誰に何をどう伝えたいのかを思考する習慣は、研究生活の中で得られたものです。仕事でのやり取りは基本的に英語なので、日本生まれの日本語話者としてはまだまだ苦労も多いですが、これまで身につけてきた英語の基礎体力と、異文化理解やジェンダー、多様性などに関する様々な感覚を総動員しながら乗り切っています。

良い先生方に恵まれ、海外渡航の助成制度も整っていたから研究ができた

文学研究科では、学際的な研究を後押ししてくださる良い先生方に恵まれたこと、調査のため海外渡航する際の助成制度が整っていたことに支えられました。どちらが欠けていても、私の研究は存在しなかったと思います。

英語圏文化専修は、歴史学、文学、言語学など様々な研究アプローチが交叉しています。先生方は、人文学の課題の探究という大きな共通目標に向け、専門分野の垣根を越えてご指導下さいました。このような環境は、かんたんに巡り合えるものではないと思っています。

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