- 高橋 卓也教授
- Takuya Takahashi
- 生命情報学科
- 研究室計算構造生物学研究室
- 専門分野生物物理、計算機科学、タンパク質科学
- 担当科目構造生物学
- Q1研究の内容を教えてください。
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生命現象とは、生体組織を構成する膨大な生体高分子の多様な働きを通して実現されています。そして全ての蛋白質の立体構造を決定する基本情報はDNA配列として保存されています。
私の研究室では、立体構造形成の解明、そして立体構造から、いかにして機能が発現されるかを解明しています。研究手法として、ビッグデータと人工知能AIを活用した創薬と知識探索、実験データに基づいた物理化学的理論の構築、データベース解析などの情報論的手法や、各種分子シミュレーション、エネルギー計算技術など、様々な手法を用い、具体的には「筋肉の超高性能の謎」「超分子形成の謎」「チャネル分子の機能メカニズム」「創薬の基礎になる分子探索」などの未解明の人類の課題に挑戦して生命の神秘を明らかにするだけでなく、その知識を未来技術の開発へと役立てていきます。 - Q2研究に興味を持ったきっかけを教えてください。
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出身は都立三田高校で、元は女子高で女子比率が高くて活気があり、全般にのんびりしていて自由な気風でしたが、同級生が家庭教師に大学の物理を習っていて、波動方程式(偏微分方程式)を見せてくれたとき、物理数学に自信があったのに全然理解できなかったのが衝撃でした。また当時は、心や生命が細胞や脳といった物質の働きとして理解できるという常識が全くなかったので、それができるようになりつつあったこともかなり衝撃的で、生命現象を物理を使って理解しようという意識が強くなっていったのも高校時代からでした。東大入学後も進振で医学部か物理かを一時悩んだことがありましたが、物理を選び、その後、生命研究に進んだのも、その辺に動機があったのかもしれません。
- Q3高校生へメッセージをお願いします。
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私が高校生の時代と現在の高校生が学ぶ理系科目で最も大きく内容が変更されたのは生物学でしょう。私の高校時代の生物の教科書は覚えることが多く暗記が嫌いな私には魅力的ではありませんでした。しかし、現在の高校生物の教科書では、物理化学の実験手法によって得られた分子レベルの膨大な情報に基づき、生命の基本原理の説明もなされるようになっています。つまり生物を分子の集合体として扱う現代の生命科学では、物理や化学が果たす役割がますます大きくなってきているのです。高校生の数学や物理離れが問題になっていますが、生命を研究する上で物理法則がますます重要になってきているというのが現実です。化学や地学と同じく、生物もまた、その基礎には物理法則があるので、生物の理解には物理化学や数学は必要ないとは考えず、物理や数学もきちんと学び、基礎を理解しておくことが必要です。