MESSAGE

メッセージ

山田雄一氏

山田 雄一

現  職:公益財団法人日本交通公社
理事・観光研究部長

観光は“第三の波”のサーフライダーである

近年、観光は様々な場面で取り上げられるようになってきました。
COVID-19によるパンデミックによって壊滅的な被害を受けながら、エンデミックとなり急速に回復している市場回復力は、現在の成熟化した社会においては無視できない成長力となっています。ほぼ唯一の成長産業と言うこともできるでしょう。

観光による地域振興は、これまで観光消費による経済波及効果が取り上げられることが多くありました。しかしながら、観光振興が地域に及ぼす効果は、こうした経済的な効果にとどまりません。観光面で注目される地域は、訪れたい場所から滞在・居住したい場所へと変化し、自立性の高い人材が集まるようになってきているからです。

米国で言えばポートランドやデンバー、欧州ではニースやチューリッヒなどが恒例でしょう。これは、ネット社会となり、居住地と就業地(就学地)との関係性が希薄となったことが背景にあります。自立した人材が集まる地域は、高い創造力を備えるようになり、地域としての付加価値が上がり、その人材力や地域力を求めて企業や資本が多く投入されるようになっていきます。

産業革命前、人類社会の中心は農作物を生産する農村でした。これが、産業革命によって製造業が主体となることで都市に中心がシフトしました。が、我々が、現在、直面している情報革命では、社会の中心が「滞在したい/暮らしたい場所」にシフトしていくと私は考えています。その中心となって、そのパラダイムシフトを駆動させていくわかりやすいエンジンが「観光」となります。

このメカニズムを理解することで、地域を持続的に振興していくためには、何を考え、どのような行動を取っていけばよいのかを、独自の視点で考えていくことが出来るようになるでしょう。3回の講義を通じて考えていきたいと思います。