RBS通信
2026.09.07
記事
第一期修了生が語る観光MBA ―多様な学び方とその実践 ―

観光マネジメント専攻 第1期生 修了生座談会
第一期修了生が語る観光MBA
―多様な学び方とその実践―
(*座談会は2026年3月に実施されました。)
クロストーク メンバー紹介

王 品東(WANG Pintung)さん
(株式会社オリエンス・ナビ 代表取締役|観光事業マネジメントプログラム修了生)

安藤 采子さん
(情報サービス業|観光事業キャリア形成プログラム修了生)

宮本 恭子さん
(全日本空輸株式会社 客室乗務員|観光事業マネジメントプログラム修了生)

白井 大稀さん
(西日本高速道路株式会社 事業開発本部|観光事業マネジメントプログラム修了生)

平安座 秀人さん
(旅行会社勤務|観光事業マネジメントプログラム修了生)

大島 知典
立命館大学ビジネススクール 観光マネジメント専攻 准教授(モデレーター)
トピック
現場の課題意識から観光MBAへの進学
大島:皆さん、改めてご修了おめでとうございます。あっという間の2年間でしたね。観光マネジメント専攻は、皆さんが第1期生になります。まずは、なぜRBSで学ぼうと思ったのか、それぞれの動機から伺わせてください。
王:私はもともと台湾の旅行会社に勤務して、日本駐在員として10年ほど訪日インバウンドのスキーツアー運営などを現場で担当してきました。新潟で暮らすうちに、まだ活用されていない観光資源がたくさんあることに気づき、いつかは独立して商品化したいと考えるようになったんです。ただ、会社経営やマネジメントの知識がなくて。転職サイトの広告で観光MBA1期生の募集を見た時に「まさに今私が必要なのはこれだ」と思って応募しました。
白井:私はインフラの会社からの企業派遣で、社内公募で指定されていたのがRBSでした。観光産業に特化した初めてのMBAで、しかも1期生になれるという点はとても魅力的でしたね。正直、これまで観光産業に深く関わってきたわけではなかったので、交通インフラ事業者として観光産業にどう関わっていけるか、その思考を深めたいという思いが強かったです。
平安座:私は旅行会社で働く中で、業界に対して漠然とした課題を感じていました。コロナ禍を経て組織変革や人材流出を経験し、自分も変わらなければ、成長しなければという思いが強くなり、人材マネジメントを経験則ではなく、理論的に学びたいと思うようになりました。そうした折に、「観光にMBAの力を」というキャッチフレーズを目にして、本当に共感したんです。
安藤:私は立命館大学経営学部からの内部進学です。経営学部に進んだのも、もとは琉球舞踊の価値を次世代につなぎ、踊り手が継続的に活動できる仕組みを考えたいという理由でした。ただ、経営の知識だけでは文化的な価値を扱いきれないことに気づいて。授業で観光学を学んだ時に「琉球舞踊って観光と密接に関わっている。これだ。」と思うようになっていたところ、ちょうど大学院1期生の募集が始まったので、本当にいいタイミングでした。
宮本:私は実は大学院に通うのは2度目です。1度目は地域創生がテーマで社会的・人為的な側面を学んだのですが、それを実務に落とし込もうとした時に、マネタイズの重要性を痛感したんです。経営管理にもともと興味があって、SNSをスクロールしていたら、ちょうどRBSの広告が出てきました。
大島:皆さん、それぞれ異なる背景や動機をお持ちですね。観光が好きで、地域に貢献したい、文化を残したいという志を持った方が集まるのが、観光マネジメント専攻の特徴だと感じます。

2.仕事や生活と両立する多様な学び方
大島:実務との両立は、それぞれにスタイルが違ったように見えますが、いかがでしたか。
白井:私は基本的に対面で受講していました。仕事を定時で終わらせて、梅田に向かうという日々を続けて。土日も基本対面だったので、定期券をフル活用しましたね。会社が比較的配慮してくれたので皆さんよりは恵まれていたほうだと思いますが、もちろん業務時間中にレポートを書けるわけではないので、時間を見つけるのに苦労しました。
平安座:私は平日は急な仕事が入るので、徹底的に「土日でやる」と決めていました。平日に授業を担当している先生の科目は選びにくかったですが、土日はずっと授業を受けていました。夏休みや春休みには「土日が休める」のが本当にうれしくて、学生に戻った気分でした。
宮本:私はシフト勤務なので、オンライン受講の制度がなかったら本当に修了できていなかったと思います。海外から授業を受けたこともありました。配信環境がしっかり整っていて、先生方が授業外のメールにも丁寧に対応してくださったのは、本当にありがたかったです。
王:私もほぼオンラインで受講していました。新潟に拠点を置きながら受講できるのは大きかったです。授業に集中できるよう、光回線を新規で契約したほどです。半年先までのスケジュールを先に押さえておくことで、無理なく仕事と両立できました。
王:レポート提出システムで、みんなのアップロード状況が見られるんですよ。前日の夜に確認してみても、誰もアップロードしていない。みんなギリギリまでレポート作成をやっているんだなと。

3.異業種の仲間との学びによる視野の広がり
大島:1期生は、業種・地域・経歴が実に多様でした。一緒に学んでみて、印象に残っていることはありますか。
安藤:社会人の方々の資料作成やプレゼンテーションの完成度の高さに驚きました。アートツーリズムの授業で、自分たちなりにかなり完成度高く準備できたと思っていた資料を、社会人の方々がさらに上回る形で出してこられたことが衝撃でした。学部新卒者(ストレートマスター)だけの授業と社会人の方が一緒の授業は本当に別物で、両方経験できたのは面白いバランスだったと思います。
白井:私もプレゼン資料の作り方は学びになりましたね。これまで自分の会社の流儀でしか作ってこなかったので、情報を構造的に整理して端的に伝える方、デザインで見せる方、データを徹底的に使う方……場面や目的に応じた見せ方があるんだと気づかされました。
平安座:私は最初、観光事業者は論理的思考よりも目の前の業務に追われがちだと感じていました。でも全国から、しかもオンラインを介して同じ問題意識を持つ仲間と議論できる。これは事業者単独では絶対に得られない経験でした。
王:そうですね。今までは「観光」が共通言語になる相手と出会う機会がほとんどなくて。観光業界の同僚と仕事で旅先に行くことはあっても、全国規模で、しかもフラットに議論できる仲間に出会えたのは、外国人として日本で事業を展開する私にとって、特に大きな財産です。
大島:フィールドワークも印象に残っているのではないでしょうか。
宮本:大島先生のフィールドワークは特に印象的でした。事前のグループワークで密に連絡を取り合って、現地でも同じ課題に対する意見を共有して。フィールドワークにおける取り組みが、後のリサーチペーパー(ゼミにおける最終成果物)の研究テーマにもつながっていきました。
大島:昼は講義や議論を重ね、実際に地域を見て回る。夜は食事を囲みながら観光について語り合い、翌朝もまた議論する。まさに合宿のような濃密なフィールドワークでした。
安藤:ザ・合宿という感じでした。
白井:私はゼミで敦賀へのフィールドワークに行きました。北陸新幹線の終点となる街で、敦賀に降り立つ人が増えると見込まれる中、観光をどう動かすかというテーマで、市役所の方ともディスカッションさせていただきました。
私自身は、北陸新幹線の開通によって大阪駅や東京駅に「敦賀」という名前が表示されるのは大きな広告効果になるので、これを活用してどんどんPRできるのではないかと考えていたのですが、行政の方からは、予算上の制約や、地域として配慮すべき点があるというお話がありました。
その話を聞いて、自分たちの会社の方が比較的柔軟に動かせている面もあるのだと気づかされたことが学びになりました。
王:私は天草でのフィールドワークに参加しました。世界遺産のキリシタン関連集落を、外国人の視点から地域の魅力としてどう発信するかというテーマで、現地ではラジオにも出演しました。台湾でも出たことがないのに、ラジオデビューしてしまったんです。
大島:観光が好きで地域貢献したい、文化を残したいという人が集まるからこそ、視点が広く、議論も深くなる。経営管理専攻の方々とはまた違う、観光MBAならではの空気だと感じます。


4.観光MBAの学びの先に描く、これからの挑戦
大島:MBAホルダーになる皆さん、ここから先のキャリアについて聞かせてください。
王:実は昨年、湯沢町で旅行会社を立ち上げて独立しました。全国通訳案内士の業務もやりながら、RBSのネットワークを最大限活用させてもらっています。観光圏のお仕事もRBSのご縁から繋がりました。外国人として日本で事業をやる上で、これは入学前には想像できなかった経験です。
白井:私はもともと観光との関わりが薄い企業からの参加でしたが、これから日本のあり方が変わっていく中で、高速道路という閉鎖的な道路空間を地域に開いていきたいと考えています。リサーチペーパーでは、サービスエリア・パーキングエリアを起点として地域とつなげ、関係人口・交流人口を増やしていく構想を書きました。これを実現できるよう、社内で観光系事業のパイオニアになりたいです。
安藤:私はリサーチペーパーで文化観光について書いたのですが、調査でご協力いただいた劇場の方が、その内容を上司に共有してくださったんです。そこから「うちの劇場で、舞踊と研究と観光事業を組み合わせた形で何か一緒にできないか」というお話をいただいているところです。県庁の方など、公的な場面でも、学部生の頃よりも、専門的な視点を持ってお話しできるようになったことは大きな変化です。
宮本:私はずっと航空会社のフロントラインに勤めていて、経営から遠い環境にいました。RBSで管理会計や企業財務を学び、自社の財務の見方が変わってきた感覚があります。社内試験を経て、この4月から職種を変え、基幹業務に関わることになりました。修了後も科目等履修生として学びを続けながら、アウトプットを増やしていきたいと考えています。
平安座:私は感覚ではなく理論に基づいて説明・共有できるようになったことが、最大の成果です。今後は観光業界の人材育成や組織変革に貢献していきたいと思っています。ホスピタリティ産業はエンカウンター(顧客接点)が長く、感情労働でもある。そこに従事する人たちの質的価値を高め、給与体系も変えていかないと業界は良くならない、という視点が得られたのは、人的資源管理を学んだからこその実感です。観光業に関わる人ほど、学ぶ意義は大きいと感じています。
大島:それぞれが、それぞれの現場で「次に何をするか」を見つけて修了されていく。最後に、これから入学を検討されている方へ、ひとことずつメッセージをお願いします。
安藤:文化観光に関わる人ほど、お金を稼がないと食べていけないけれども、自分の文化を商品のように軽く扱いたいわけではないというジレンマを抱えていると思うんです。観光MBAでは「うまく伝える方法って難しいよね」と共感しながら一緒に考えてくれる。「観光」と「経営」が一つの名前になっていることが、それを表していると思います。
白井:インフラ業界の方は、現状維持に強みを置きがちですが、人口や交通量が減っていく中で、それだけではダメだという危機感も持たれていると思います。観光は一つの選択肢になりますし、MBAの経営要素もあるので、今の業務にも役立つ。少しイノベーティブな視点を持ったインフラ系の方には、ぜひ来ていただきたいです。
王:私のように海外出身者として日本の地方で観光に関わっている方には、特に入学をおすすめします。地方ではインバウンド事業者と日本人事業者の間で温度差を感じることもあります。観光のマーケティングや単価向上のノウハウを、ここで体系的に学んでほしい。RBSにはDMOや行政の方も来ていますし、皆さん仲良くなれます。
宮本:観光産業は今、女性の活躍も地域で広がっています。実際に地方のDMOや観光の中心を担っていきたいという女性も増えていると思います。観光マネジメント専攻での学びを次の自分のステップに活かすという意味で有意義な時間だったと思いますので、地方で新しいキャリアに踏み出すことを迷っている方がもしいらっしゃるなら、まず一歩を踏み出してみてほしい。そこから違うステージが見えてくると思います。「仕事と両立できるか」「ハードな学びがこなせるか」と悩む方も、迷っているなら絶対にチャレンジした方がいい。修了を控えた今、自信を持ってそうお伝えできます。
平安座:観光業に対して漠然とした悩みや不安を抱えている方ほど、学ぶことで解決策やあるべき姿が見えてくると思います。地方からでも全国から学べる環境が、RBSにはあります。次の人の希望になればという思いで、これからも学びたい人たちに伝えていきたいです。
大島:観光は「光」という字が入っているくらいですから、前向きに考えていきたいですね。「日本にはおもてなしがあって当たり前」という前提を見つめ直し、その価値を適切に伝え、持続可能な経営につなげていく。本気で考えていきたい方に、ぜひRBSに来ていただけるとうれしいですね。皆さん、本日は本当にありがとうございました。
