心理プラスな人(卒業生メッセージ)

2024年度



総合心理学部で気づいたデータ分析の奥深さ

小牧 和哉 さん
心理学専攻 2019年卒業

株式会社ブレインパッド アナリティクスコンサルティングユニット データサイエンティスト

総合心理学部では文化心理学・文化社会学の研究を通じて、統計的手法を学んだ小牧さん。統計学の奥深さに魅せられ、現在はデータサイエンティストとして、LLM(大規模言語モデル。文章、画像、音楽などを作成する生成AIのなかでも、特に自然言語処理を行うモデル)の研究開発に携わっています。心理学の周辺領域が持つ多様性と魅力について、小牧さんにお話を伺ってみましょう。

LLMの研究開発にアサインされる

総合心理学部を卒業後、他大学の大学院に進学し、2022年からデータサイエンティストとして活躍している小牧さん。現在は主に、LLMの研究開発プロジェクトにアサインされているそうです。

「ChatGPTの登場で注目が集まっているLLMを、ビジネスで活用するための研究チームで活動しています。現状のAIは日常会話には十分でも、金融や法律、医療など高度な専門分野には対応できていません。また、ビジネス上もしくは倫理的に不適切な回答を行うリスクもあります。そういった課題を解決するための、研究開発をしています」

LLMの研究は地道な積み重ねによるところも多く、「参照するデータベースから適切な内容を引っ張ってこられるか」「データの内容をきちんと学習できているか」など様々な課題を設定し、AIの性能を検証します。

「仮説に基づいて検証して、今度は得られた結果を元に仮説を修正したり、新たな仮説を立てたりといった作業の繰り返しです。求めている結果に段々と近づいていく過程には、やりがいを感じて楽しいですね。社会で注目を集めている分野なので、自分が必要とされている実感もあります」

カウンセラーからデータサイエンティストへ

データサイエンティストとしてIT業界で働く小牧さんも、総合心理学部に入った当初は、カウンセラーを目指していたそう。しかし、2回生で受講したデータ分析の演習を受け、興味の方向性が変わったと言います。

「心理学には大きく分けて2種類の観点(パースペクティブ)があると思っています。個人の内面を掘り下げるか、個人を取り巻く環境を掘り下げるか。いわゆる“心理学”というと前者をイメージすることが多いですが、私は大学での講義や演習を通じて後者の魅力に気づきました」

小牧さんが特に興味を持ったのは文化心理学。文化が人々の心理にどのような影響を及ぼしているのか、あるいは反対に人々の心理が文化にどのような変化をもたらすのかを明らかにする学問です。小牧さんは集まったデータから、社会の仕組みやリアルタイムの情勢が浮かび上がってくるところに、面白みを感じたのだとか。そこで得られた興味は、その後のキャリアにも大きな影響を与えることになります。

「当初は就職も考えていましたが、3回生の頃にはすっかりデータ分析にのめり込んでしまって。心理学とはまた異なる側面からデータを扱ってみたいと思い、大学院に進学しました。高校生のときには、データ分析に必要な数学はむしろ苦手な教科だったんですけどね」

データ分析を軸に、新たな可能性を開拓

総合心理学部での経験から、データ分析への面白さに気づいた小牧さん。就職後は学部、大学院で培ったデータ分析に没頭しているのかと思いきや、意外とそうでもないのだとか。

「データサイエンティストの職務は、実はデータ分析だけではありません。一般にビジネス、エンジニアリング、データサイエンスの3つの要素が必要だとよく言われます。お客様の課題解決のために、特定の業界に関する知識を身につけたり、アプリ開発を行ったりと、幅広い知識・スキルが求められる職業なんです」


小牧さんがアサインされているLLMの研究開発プロジェクトも、エンジニアリングとデータサイエンスの両面を持ち合わせているそう。その影響でモノ作りの楽しさにも目覚め、もっと基礎的なソフトウェア開発にも興味が向いていると言います。

「自分の中で軸になっているのは、総合心理学部で出会ったデータ分析です。今後はそこに新しい技術や発想を掛け合わせて、より広い視点でデータと向き合っていきたいですね。自分の可能性を広げていくという意味では、大学生の頃と考え方はそれほど変わっていないのかもしれません」

自分の好奇心と素直に向き合う

総合心理学部の思い出として、認知心理学や文化心理学の講義はもちろん、哲学や社会学などの教養科目にも忘れられないものがあると小牧さん。テクノロジーの発展によって、社会における重要度が増しているデータサイエンティストですが、大学に進学した段階では、就職にこだわって将来の可能性を制限する必要はないと話します。

「私の経験から言っても、入学する際にいわゆる“心理学”としてカウンセラーや公認心理師などの具体的な職種をイメージしている人は多いのではないでしょうか。しかし、実際の総合心理学部には周辺領域も含めて多くの選択肢があり、学んだことを活かせる職業も多岐にわたります。自分自身を深掘りしていくためにも、“何となく興味がある”講義はまず受けてみることをおすすめしたいですね」

大学院に進学した時点でさえ、自分がデータサイエンティストになることは想像もしていなかったと、小牧さんは言います。データ分析という“やりたいこと”に一直線だったとか。

「総合心理学部の魅力は、視点を広げた上で方向性を選べるところにあると思います。心理を研究するにも様々な方法があり、興味を惹かれる研究手法は人それぞれ。自分の好奇心と素直に向き合って深めていくうちに、自然と進路も見えてくるのではないでしょうか」

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