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臨床心理学概論ストレスに心理学からアプローチ! ココロを軽くするジャズと絵本

2022.7.1

誰しもが抱えるストレスに、臨床心理学の観点からアプローチ。臨床心理士としてスクールカウンセラーの現場から得た知見を生かして数々のイベントで人々を癒やす増田先生から、ジャズと絵本の「読み合わせ」がもたらすストレス軽減方法を学びます。

今回の案内人
増田梨花先生
  • ストレスに悩んでいませんか? おすすめのストレス軽減方法は、「絵本」と「ジャズ」を組み合わせた「読み合わせ」。
  • 子どもから大人まで、「癒やされた」という声が多数。数々のイベントも大盛況で、ランチタイムに取り入れている会社も!
  • たかが絵本、されど絵本。誰にでもすぐ効果が出るので、ぜひ試してみて♪

ストレスにはジャズ×絵本! 老若男女に効くストレス軽減方法

学業や進路、恋愛、アルバイト、人間関係…。年齢性別問わず、多くの方がストレスに悩んでいるのではないでしょうか。そこで増田先生が提案するのが、ジャズを流しながら絵本を読み、聞く「読み合わせ」です。

 「一方的に話す『読み聞かせ』とは異なり、絵本を読み、聞き、そしてコミュニケーションを行うことで調整機能が働くことから、『読み合わせ』と呼んでいます」(増田先生)

視覚と聴覚をどちらも使うことで、右脳と左脳が両方活性化するのが良いのだとか。さまざまな実験器具を使って、読み合わせをしている人たちの反応を見てみると……。

 「読み合わせをする前と後で、体温を色で表示するサーモグラフィーを見ると、体温が上がっていることがわかりました。また、心拍数が下がっている、つまり副交感神経が優位になっていることも判明。どちらも、読み合わせによりストレスが軽減し、リラックス効果がもたらされた証と言えます」(増田先生)

P-Fスタディと呼ばれる検査方法でも、フラストレーション(不快な緊張や不安、不満)が低減していることが証明されているとか。なんとこの「読み合わせ」、読む方にも聴く方にも効果が見られるというのだから驚きです!

効果は本当? 増田先生の共作絵本『マスクマンロッキー』を視聴してみた

「ジャズと絵本ってマッチするの?」「本当にリラックスできるの?」そんな疑問を抱いた方もいるかもしれません。そこで実際に、増田先生が香港理工大学のAlex Ho先生、中京大学の宮田義郎先生とともに作った絵本『マスクマンロッキー』(ほんの森出版)の読み合わせ動画を視聴してみました。

ゆったりとした増田先生の声と、楽しげなジャズが相まって、段々心がほぐれるような温かい気持ちに。「まずは試してみたい」「読み合わせる相手がいない」というときは、ぜひ先生のYouTubeチャンネルから動画をチェックしてみてください。

各動画のコメント欄を見てみると、「癒やされた」「元気が出た」と、前向きな声が多数。また、積極的に開催しているイベントでも、うれしい反響があるのだとか。

 「臨床心理学をベースにした絵本プロジェクト『ピクチャーブック・ヒーリング―笑顔の花を咲かせよう♪―』では、東日本の復興地でのチャリティイベントや、『嵐電』の愛称で知られる京福電気鉄道嵐山本線電車内での絵本の読み合わせなど、独自のイベントを行っています。私が嵐電で読み合わせた本を気に入って、帰宅してすぐ購入し、何度も読んでいる、と教えてくれた親子もいました」(増田先生)

最近はジャズのみならず、和太鼓、ハープ、童謡など、いろいろな音楽と絵本を組み合わせるなどして研究を深めているそう。今後どんなイベントが開催されるのか、楽しみです!

絵本の力で周囲をハッピーに! 広がる対人援助の輪

多彩な活動を行う増田先生ですが、もともと目指していたのは英語の教師。実習の中で生徒の心理を学びたくなり、臨床心理士やクールカウンセラーとして働く中で、絵本の持つ力に注目するようになったと言います。

 「絵本や歌が、自己表出が苦手な子どもたちの助けになると気づいたのです。絵本をきっかけに、言いたいことが言葉になる、そんな子どもがとても多くて。私自身も、幼い頃に絵本に助けられたことがあったので、その気持ちはよく理解できました」(増田先生)

確かに、自分の考えや意見を言葉で表現するのは難しい。大人でも苦手な人は多いのだから、子どもならなおさらです。

さまざまな実体験を通し、現在は「対人援助学」にも力を入れている増田先生。仲間同士の支え合いを意味するピアサポートの理念に基づき、生きにくい人たちをサポートしています。

「心理学も対人援助学もスキルを学ぶだけでなく、得た知識を使ってアクションを起こすことが大切。サポートする中で、自分も励まされていることに気付くことはずです」(増田先生)

教え子の中には、各地で支援のため奔走している人や、児相など人と関わる分野で働くなど、“アクション”を起こしている人が大勢います。会社員となって、会社のランチタイムに読み合わせを導入した方もいるとか。もちろん、効果はバッチリ!

ストレスを完全になくすのは難しい現代。ジャズと読み合わせを活用して、自身のストレスとうまく付き合っていきましょう。

ようこそ、総合心理学・人間科学の世界へ!

心理学を志す方は、イメージする力が大切。その意味でも、絵本はいい教科書になりますよ。今はまだ進路に迷っている方もいるかもしれません。しかし、迷いやすい人の方が、他人の心をイメージする力が強いと思っているので、ぜひ大いに迷って、心理学の世界にも目を向けてもらえたら。私もたくさん迷いました!(笑)