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メディア心理学記事を読む前にみんなの反応が気になってしまう? SNSに潜む心理のワナ

2025.03.26

SNSのタイムラインには多くのニュース記事が流れてきます。タイトルを見て、コメントを見て、それから内容を読む……という習慣がついていませんか? 新聞やテレビ、SNSなどの “メディア”から人が受ける影響を研究する竇先生によると、SNSでの情報収集には思わぬワナがあるといいます。

今回の案内人
竇雪先生
  • ニュース記事の中身を読む前に、「いいね」の数やコメント欄を確認していませんか?
  • メディア心理学の考え方を知れば、SNSとの関わり方を客観視できる!
  • 周りの意見を尊重しながらも、自分の意見を持つ習慣を身につけましょう。

SNS“だけ”で情報収集は要注意! 自分の興味を広げる“偶然の出合い”を大切に

メディアとは「コミュニケーションを媒介するもの」、つまり情報を伝えるための手段のこと。新聞やテレビ、ラジオ、雑誌などの“マスメディア”はもちろん、XやInstagram、YouTubeなどのSNSも広い意味でのメディアに含まれます。竇先生が専門としているメディア心理学は、さまざまなメディアから人が受ける影響を研究する学問です。

「誰もがスマホを持つ社会になったことで、メディアがぐっと身近な社会になりました。今やメディアと関わりを持たない人はほとんどいません」(竇先生)

しかし、同じスマホを使っていても、見ているメディアは人によって異なります。竇先生は学生へのアンケートを通じて、メディアとの関わり方に急激な変化が起きていることに気がついたのだとか。

「毎年、授業で『ニュースをどのメディアで確認しているか』を学生に聞いています。2016年ごろまではテレビが多く、新聞を読んでいる人もいました。しかし、近年はSNSが主流。特に多くなってきたのがXやInstagram、YouTubeで情報収集している人たちです」

読者の皆さんの中にもSNSで世の中の動きを確認している方は多いかもしれません。SNSで情報を得ることにはどのような特徴があるのでしょうか。

「使っていくうちに、自分の知りたいニュースしか受け取れなくなってしまう可能性があります。新聞やテレビには“偶然の出合い”があるんですよ。自分が知りたかったニュースの前後にまったく別の話題のニュースが入ってくる。でも、SNSにはそれが少ないので、いつの間にか知りたいことしか知らない、見たいものしか見えない状態に陥ってしまうかもしれません。複数のメディアから情報を得る意味は、そこにあるのです」

“他人の意見”が“自分の意見”に……。他人の反応が見えすぎてしまうSNSの怖さ

それでも「ニュースをまったく見ないよりはマシ」「身近なツールで日常的に確認するのは良いことだ」と考えた方もいるかも知れません。しかし、SNSだけを情報収集の手段にしていると、いつの間にか自分の考えを見失ってしまう、もう一つのリスクもあるといいます。

「SNSの良いところは、ある出来事に対する他人の反応がリアルタイムに確認できることですよね。でも、ニュースを見る上ではそれがマイナスに働く場合も。例えば、ニュースの内容よりも先にセンセーショナルなタイトルと他人の反応が目に入ってくることがあります。すると、先入観を持った状態でニュースを見ることになる。極端な例では、コメントの内容に引っ張られて、誤った情報を信じてしまうこともあります」

SNSにはさまざまな立場からの意見が集まります。炎上している記事には数千件のいいね、数百件のコメントが寄せられることも少なくありません。そうした反応を見ているうちに、物事の裏側を知った気分になってしまうのだとか。

「他人の意見に振り回されない、というのは思っている以上に難しいものです。リポストやシェア機能で何度も同じものを見ることでそれが好きになっていく『単純接触効果』や、似た意見の持ち主が集まることで過激になっていく『エコーチェンバー効果』など、心理学でも研究対象となっている現象がSNS上では起こります」

しっかりした自分の意見を持っているつもりが、よく考えるとその根拠は「誰かが言っていたから」かも……。SNSでニュースを見るという何気ない習慣も、時には見直してみることが大切です。

「SNSとの向き合い方について、“メディアリテラシー”という言葉を聞き飽きたと感じる人も多いでしょう。実際、今の高校生・大学生は自分の意見や考え方を共有したり発信したりすることにはとても慎重だと感じています。しかし、SNSを使う上で気をつけなければいけないのは、“悪意ある他者”だけではありません。私たちのモノの見方や心理の動きにも思わぬワナが潜んでいるのです」

メディア心理学は、「人がどのように脳で情報を処理しているか」という認知心理学の問題にも通ずるといいます。SNSの使い方にぎくりとしたそこのあなた! 総合心理学部で“メディアリテラシー”の一歩先を学んでみませんか。

ようこそ、総合心理学・人間科学の世界へ!

メディアは私たちの生活とは切っても切り離せないもの。だからこそ、メディア心理学は幅広い学問分野や領域と密接に関係しています。入学した後に何を勉強するとしても、メディア心理学は役立つはず。立命館大学の総合心理学部で多くの先生の授業を受けて、多くのヒントをもらって、最終的に自分の力で新しいものを見つけてみてください。