FUJII Yoshitaka
人がどうやって外の世界を知るのかという、知覚の研究をしています。特に、目から入る光の情報である視覚の研究が中心です。一般的には、「目で物を見る」と表現されることが多いですが、目はその入口で、実際には脳に入ってから様々な情報処理をして世界を見ています。そういう脳の働きを調べています。
視覚の中でも、特に、どうやって3次元の世界を知覚しているのかを研究しています。世界は写真のような2次元ではなくて、奥行きをもった3次元だというのはよく知られています。しかし、実は、目に映る情報は、奥行きの情報を失っていて2次元の情報しかありません。目の奥にある網膜という2次元の薄い膜に光を映してから、脳に情報を送るためです。それでも、世界が3次元であるように見えるのは、脳が失われた奥行の情報を復元しているからです。近年身近になってきたバーチャルリアリティや3D映画などでは、こういう研究を応用して作られています。
子供の頃から理科が好きで、学部学生のときは物理学を勉強していました。理系の専攻だったので授業が忙しくて、ずっとレポートに追われてた気がします。授業以外だと、パソコンとテレビゲームが好きで、インターネットにはまったり、パソコンに色んなソフトを入れて遊んだり、ネットゲームで徹夜したり。当時は、ただ好きで遊んでいただけなんですが、パソコンの技能は研究に必須のものですし、テレビゲームは様々な視覚表現の宝庫ですし、結果的に、今の仕事にとても役立っています。
ある日、オープンキャンパスで視覚の研究室に行ったときに、とても面白い錯視(目の錯覚)を見せてもらって、物理学のような数式を通してではなくて、直接目で見ることの面白さを知りました。それがきっかけで、大学院に進学してから視覚の研究を始めました。
物理学と心理学はぜんぜん違う分野と思われるかもしれませんが、外の世界の仕組みを調べる物理学と、それをどう感じるかという知覚心理学は密接な関係にあります。僕としては、心理学の道に進んだという自覚はなかったんですが、気がついたら心理学の教員になってました。
世の中には面白いことがたくさんあります。でも、気づかないまま過ごしてしまうことも多いのではないでしょうか。様々な知識や経験があれば、今までとは違った視点で世界を見ることができます。心理学でなくてもいいと思います。大学では色々な知識や経験を積んで、色々なことを考えて、ときには悩んで失敗して、楽しい人生を送ってください。