HOSHINO Yuji
私の研究テーマは人間の記憶と判断です。記憶はなくてはならないものですが、同時に記憶にはあてにならないところがあります。
懸命に学習したことを肝心なときに思い出せなくなったり、直前まで意識していたことをふと忘れてしまったりします。また私たちの判断も頼りないものです。関連しない不適切な情報を集めて手がかりにすれば、誤った判断に自信を深めてしまうことになるでしょう。
しかし、人々の記憶と判断には利点も備わっているはずです。
心のはたらきの利点と欠点を知ることは自分自身を知ることであり、興味深いことだと思います。
そして自分自身を知ることは、世の中に実践的な示唆を提供することにつながると考えています。
私は学部を卒業後、大学院に進学して、大学の教員になったので、学生時代と基本的に同じような生活を今も繰り返しています。学生時代からずーと同じことを続けているような気がします。そういう生活史の人は世の中で珍しいほうかもしれません。
現在は運動不足ですが、学部生のころはスポーツクラブに属していました。クラブでは活躍できませんでしたが、体力増強にはなったかもしれません。
私が属した大学は小さな規模の大学なので人数は決して多くはありませんが、学生・院生同士の交流はたびたびありました。
世の中で言われているように、学生時代に何かに打ち込んだり、友人と交流したりすることが大事だと思います。
私は認知心理学的枠組みから、人の記憶や判断、注意や意識などについて主に実験的な方法を用いて研究しています。認知心理学のおもしろいところは、簡潔にいえば、人間の特徴を明らかにすることでしょう。
生物としての人間には他の動物とは異なる性質がありますが、人間の特徴を心理学的に明らかにできれば、それは興味深いことです。
たとえば、環境をどのように認識するのかは人間と他の生物では大きく異なります。あるいは知的な機械と人間を比較しても大きく異なるでしょう。そういう点に気づいたことが心理学を始めるきっかけであったように思います。一言でいえば興味を持ったから研究を続けてきたのだと思います。
興味を持った研究について調べてみる。
自分でもできそうな研究があれば、実験を行い、実験結果をどう考えたらよいのかいろいろと関連する研究を調べて、考えてみると、また興味が湧いてくるといった循環を繰り返してきたように思います。
私が高校生であったころの話をしても皆さんの参考にはならないと思いますが、私は高校生のころ何事にもあまり熱心な生徒ではありませんでしたが、
何かいろいろ本を読んでいた記憶があります。
何を読んでいたのかすっかり忘れてしまったのですが、
精神分析で有名なフロイトの著作(もちろん翻訳)も読んだように思います。
フロイトが述べていることを私はほとんど理解できませんでしたが、
フロイトの時代には偏見の対象であったと考えられる
性的に倒錯した人々について大変丁寧にかつ真面目に論じていたことに
感銘を覚えた記憶があります。
現在の私の専門分野に精神分析は含まれませんが、
常識にとらわれず人の心のはたらきについて考えることは
大事なことだなと考えています。