NAKASHIKA Naoki
障がいのある生徒さんを対象としたキャリア支援がテーマです。
ここでのキャリアは就職という意味ではなく、「できる」ことを広げていこうという意味です。
例えば障がいのある高等部の生徒さんに、大学内に設けた模擬店舗に来てもらって仕事をしてもらいます。
普段の学校や生活の場面では「○○ができない」と見られることが多いですが、場面を変えて周囲がそのつもりで見ることにより「できる」ことは広がっていきます。「できる」は援助付きのものを指します。
援助付きというと特別な何かを思い浮かべるかもしれませんが、行動分析という考え方によれば、私たちの普段の振る舞い(行動といいます)はすべて何らかの援助付きだということができます。
障がいがあると、大多数にあわせた援助がうまく働かないことがあり、その人にあわせた別の援助が必要になります。
個人にあわせた援助を見つけ「できる」を拡げていくことが研究テーマです。
ちょうど私が学生のころ、個人で使うコンピュータが大学生でもアルバイト代を貯めていけば買えるくらいの価格になってきました。今から思えばさして性能の高くないコンピュータを購入して、あれこれと遊んでいたことを覚えています。
今と違ってワープロや表計算ソフトが手軽に使える状態ではなかったので、本を見ながらプログラムを組んで触っていくことからスタートしました。
簡単なゲームを作ってみたり、多少は役に立つかもしれない(けど実際にはほとんど使わなかった)プログラムを組んでみたりというように。役に立つだろうとかいうことは全く考えずに、単に楽しんでいました。
それが卒業論文の研究にあたって実験をする際に、遊んで覚えていたプログラムが役に立ったのですから不思議なものです。
大学に入学して行動分析という考え方に出会ったのが大きなきっかけだと思います。日常的な考え方とは異なる考え方をとることに惹かれたのかもしれません。
質問紙などによって研究をすることが多い自己というものを行動分析的に実験的に考えることができないだろうか、ということに興味をもって大学院に進みました。
自己というのは社会の中で形成されるものだから、社会的な場面での行動を考えるところから始めてはどうかというアドバイスを受けて、観察学習や模倣に関してハトを使って研究をスタートしました。
例えば装置に2羽のハトを入れて、ハトAはランプに従って動けばエサをもらえるようにします。もう一方のハトBはランプの手がかりは使えずに、ハトAが今どこにいるかというのを手がかりにして動くことでエサをもらえるようにします。
他者に注目するという行動は経験によって形成されるという研究が現在のキャリア支援にもつながっています。
自分が面白い、興味があると思ったことには
積極的にあれこれと手を出していくといいと思います。
高校生や大学生のころに興味をもって深く親しんだことは、
勉強に関することであれ遊びに関することであれ、
長く付き合っていくことになるようです。