SUZUKI Chiharu
インクのしみ(インクブロット)が何に見えるかを答えるロールシャッハ・テストを題材に研究してきました。インクブロットという同じ刺激に対して、人さまざまな反応が見られる点でとても興味深い心理検査です。博士論文では、あいまいな刺激に対する主観的な知覚の個人差の背景にどのような認知的特性の個人差が関わっているのかについて、脳波(事象関連電位)を用いるなどして研究しました。例えば、色のついたインクブロットに対する反応において色を優位に用いる人は、ふさわしくない反応を抑制する反応抑制課題中の事象関連電位が小さかったり遅かったりすることが分かりました。
最近では、TwitterなどのSNSを通じて、見知らぬ人とコミュニケーションしたり実際に会ってしまったりする子どもたちについて、なぜそのような行動をとるのかに関心をもって研究しています。
軽音楽部に入って、バンド活動ばかりしていたために、留年して5年間学部生をしていました。行き当たりばったりに大学院に行ったり、就職したりしましたが、ひょんなことから博士後期課程へ進学することを勧めて頂き、今に至ります。楽器を弾いたりなど限られたことはできるのですが、人とにこやかに話をする、電話で予約を取る、書類にハンコを押す、締め切りを守るなどその他人として必要なことは何一つできないタイプの人間でした。
学部生時代に存在を知って興味を持っていたロールシャッハ・テストを博士後期課程に入って教えて頂く機会に恵まれたことから、このテストを題材にした研究をしようという着想を得ました。また同じ頃、偶然に事象関連電位の計測方法を勉強するチャンスにも恵まれ、この二つの手法をくっつけた形の今の研究へと行きつきました。
高校から大学にかけて、様々な可能性に開かれた状態から
何かを選び取ってゆくことは、希望に満ちたことでもあり、
苦しく不安なことでもあると思います。
偶然の出会いの中に否応なく投げ込まれ、
ひたすら走り続けるような時期だと思いますが、
行き当たりばったりにやってきた身から言わせてもらえば、
それらの出会いがどんな意味をもっているのか、
走り抜けてみないと分かりません。
できるだけ考えたら、偶然の中にえいやと自分を投げ出してみましょう。
そういう選択と偶然が結局は自分を作っていくのだと思います。