TOGA Miyuki
私たちは、きれいな景色を見て「美しい」と感じたり、ある空間に入って「落ち着く」と感じたりします。このような「感性」は、アートや景色だけでなく、身の回りの製品や空間、香り、音など、日常のさまざまな場面ではたらいています。
私は、こうした人の感性を科学的に測り、調べる研究をしています。例えば、物の色や形、素材、空間の特徴などが、どのような印象や感情、価値につながるのか、さらに、その感じ方が人によってどのように異なるのかを調べています。
研究分野としては、人の心の仕組みを実験によって明らかにする「認知心理学」と、感性をデータとして捉える「感性情報学」、そしてその知見を実際の物事に活かす「感性工学」の境界に位置しています。「人はなぜ、そう感じるのか」を科学的に明らかにすることが、私の研究の大きなテーマです。
大学の4年間は、平日は学業、土日はアルバイトと、ごくごく普通の学生生活を送っていました。この頃から旅行や美術館に行くことが好きで、友人とイタリアや九州を旅行したり、犬を連れて家族と信州に出かけたりしました。モネやレオナルド・ダ・ヴィンチの絵を見に行ったことは良い思い出です。
大学院に進んでからは、院生室に入り浸る毎日でした。遅くまで大学に残り、他の院生たちと大学近くの定食屋へ夕飯を食べに行くこともよくありました。研究の話をしたり、くだらない話をしたり。振り返ってみると、「大学生」「大学院生」らしい時間を存分に過ごした、充実した学生時代だったと思います。
私はもともと、「人は物事の順番をどのように覚えているのか」という記憶の研究で博士号を取りました。人の心の仕組みを一つひとつ明らかにしていく認知心理学の研究はとても面白く、今でも私の研究の大切な柱です。
一方で、こうした研究で得られた知見を、社会や人々の生活にも活かしてみたいと思うようになりました。そんな中で出会ったのが「感性」の研究です。「華やか」「美しい」「心地よい」「好き」といった感覚は、知覚や、記憶、感情など、認知心理学が扱ってきた心の仕組みと深く関わっています。そのため、これまで学んできた理論や研究方法を活かしながら、新しい問いに取り組めることに魅力を感じました。
現在は、認知心理学と感性工学の接点に立ち、人の「感じ方」の仕組みを探究する感性心理学と、それを情報として捉える感性情報学を中心に研究しています。
心理学は、人の心や行動を扱う学問ですが、とても幅広く、情報科学や工学、医学、芸術など、さまざまな分野とつながっています。だからこそ、みなさんが今「面白い」と感じていることも、思いがけないところで心理学とつながっているかもしれません。
私は、「楽しい」「面白い」という気持ちは、「もっと知りたい」という主体的な学びの出発点だと思っています。そして、自分から知ろうとすることは、新しい世界や考え方との出会いにつながり、人生を少しずつ彩り豊かにしてくれます。
心理学は、身近な「なぜ?」を科学的に考える、とても面白い学問です。ぜひ、みなさんも自分なりの「面白い」を大切にしてください。