YAMAMOTO Hiroki
私は、学習者が抱える理解不振の改善を図るために、理解を支援する説き方 (説明方略) を発達段階に応じて理論的・実践的に検討しています。具体的には、以下の3つの研究に取り組んでいます。
第1に、児童生徒の理解と支援方法の研究です。児童生徒の教材理解のメカニズムを検討し、支援方法を検討しています。第2に、理解を支援する説き方の研究です。特に、児童生徒が抱える理解不振を改善するように、理解を支援する説き方を検討しています。第3に、理解の発達に応じた説き方の研究です。理解の発達を踏まえつつ、それぞれの発達段階で出くわす理解不振を把握し、その改善につなげる説き方を検討しています。
小・中・高・大すべてを振り返っても、その時々で、つまずいた学生時代を送っていたように思います。
例えば、小学校の時、「図画工作」で思い通りの絵が描けませんでした。友達は上手に黄色やら緑やらを使って、校舎の屋根瓦とその上の雲を上手に描いていた。でも私にはどうしても屋根瓦は「黒」にしか見えなかった。
上手く描けないので、窓硝子に画用紙をテ-プで貼り付けて、その通りになぞったらいいなと思い、そう描いていたら、先生に注意されました。一言。
「どれだけなぞっても、雲は動いていくよ」。
そう、描いているうちに私の絵と雲とはずれていた。さらに一言。
「雲に黒い鉛筆の縁取りはないよ」。
そう、雲の輪郭に黒い縁取りも無かった。描く気が失せていったことを覚えています。今になって思えば、しっかりとつまいずいてばかりの学生時代だったと言えます。
大学院生の頃、「理解のつまずき」は恥ずべきもので、無くしたいものだと考えていました。
ちょうどその頃、ドナルド・A・ノーマンの「誰のためのデザイン」(新曜社) や海保博之先生の「こうすればわかりやすい表現になる」(福村出版) という著書が刊行されて、「理解のつまずき」が着目されていきました。それを何度も読み返すうちに、自分のつまずきが、実際に研究をスタ-トさせる視点になるのだと気づかせられた時に、私の研究が始まったように思います。
「理解のつまずき」をいかに解消できるのか、どのように説明したらよいのか、このようなことを考えることは、とりもなおさず教育心理学のテ-マなのだと気づかされていきました。
私の願いは、児童・生徒等の理解や学習のつまずきを汲み取り、
それを改善するための支援的な教え方 (説明方略や説得方略) を
考案して欲しいということです。
これにより、教えるべきこと (教育内容) への出遇いが
始まると考えるからです。
「教育」というと学校の教師を思い浮かべるかも知れません。
けれど、この説明社会においては、だれもが「教師」という面がありますね。
高校生のあなたも、友達に教える時、「教師」になっていますね。
道を尋ねられれば、「教え」ることでしょう。
そんな「教師」にとって、教育心理学から学ぶことは多いと考えています。
理論と実践とを融合した教育心理学研究により、
この説明社会に積極的に貢献していって欲しいと願っています。