心理プラスな人(卒業生メッセージ)

2026年度



心理学の強みは何にでも活かせる汎用性

坂本 崚 さん
心理学専攻 2021年卒業

日本コープ共済生活協同組合連合会 事務本部

コープ共済連で働くかたわら、資格試験の勉強を続ける坂本崚さん。総合心理学部では統計の奥深さに惹かれたと言いますが、それ以外にも思わぬ形で役立っている学びがあるのだとか。仕事に学びを活かすとはどういうことなのか、坂本さんに伺ってみましょう。

電話対応は臨床心理学に通ずる

コープ共済連で働く坂本さんは、組合員や病院からの問い合わせ窓口として、共済契約に関する電話対応を担当しています。現在の部署では、健康告知*が関係する契約を取り扱っており、契約終了の手続きが主要な業務。デリケートな業務内容ということもあり、時には怒りの感情を向けられることもあるのだそうです。

*健康告知とは?
公平な保険契約のため、生命保険や医療保険などを契約する際に、申込者が契約先に自身の健康状態・病歴・職業などを正確に伝える義務のこと。告知義務違反は保険契約の解除や、減額の理由となる場合がある。

「1日に30件くらいの電話対応をしています。契約者や病院からの問い合わせにお答えすることが多いのですが、こちらからご連絡することもあります。受け取るお電話は、相手がお怒りのケースがほとんど。書面で突然、契約の終了を知った方もいるので、『相手の方は今どういう気持ちでいるのか』『なぜそのような気持ちになったのか』など、お話を伺う中で想像しながら丁寧に対応することを心がけています」

入協後1年間は神戸のセンターで書類の不備を解消する業務を中心に担当してきたという坂本さん。2023年に現在の部署に異動した際は、業務内容のギャップに“しんどさ”を感じることもあったそう。しかし、総合心理学部で学んだ臨床心理のノウハウなども活かしながら、現在は落ち着いた対応ができるようになったと話します。

「今は、電話していて、相手の気持ちが晴れてくる瞬間にやりがいを感じています。長いときには1件のお電話に1時間以上対応しますが、最後には『坂本さんと話せて良かった』と感謝のお言葉をいただけることもあり、この業務をしていて良かったなと思います。
大切なのは、相手の感情に引きずられず、一歩引いた視点で冷静に受け答えすること。これは、総合心理学部でさまざまなケーススタディに触れてきた経験が活きています。『相手は今、こういう心理が働いているのかもしれない』『どう伝えたら納得してもらえるだろうか』と考える習慣が身に付きました」

グラフを見ると仕事のやる気が湧いてくる

現在は契約者とのやりとりを中心に担当している坂本さんですが、元々はアクチュアリー(保険数理人)*になることを志してコープ共済連に入協(入職)しました。坂本さんは総合心理学部で統計の面白さに目覚めたと熱く語ります。

*アクチュアリーとは?
確率論や統計といった数学的な手法を使って、保険や年金などの収益管理やリスクの算出を行う職業。公益社団法人日本アクチュアリー会が資格制度を運営しており、正会員資格の取得には最低でも2年が必要となる。実務に携わりながら取得を目指す人も多い。

「心理学概論の授業で、心理統計の存在を知ったのがきっかけでした。『心の動きのような曖昧なものでも、データを通じて体系的に説明できる』――その考え方に触れた瞬間、視界が開けたような感覚があったんです。高校の頃から数学が好きだったこともあって、統計学にどんどんのめり込んでいきました」

経営学部に通う友人と統計学の学習会を開いたり、大学図書館で関連書籍を読み漁ったりと、キャンパスの環境をフル活用して統計学への理解を深めたそう。現在も働きながらアクチュアリーの勉強を続けています。

「学生の頃は課題そっちのけで統計学の本に没頭してしまうこともあり、『自分でも少し極端だな』と思う瞬間がありました(笑)。でも、それぐらい統計が好きですし、実際に統計が社会で役立っている、役立てられると在学中に知れたことは、大きな転機になりました」

個人的にも統計を業務に組み込んで、モチベーション維持に活用しているというから驚きです。

「実は、毎回の電話の時間を計測して、集計しています。統計学の理論が現実に再現されていくのを見るのが好きなんですが、サンプルが増えれば増えるほど、電話にかかった時間のグラフが中心極限定理という法則に近づいているのが分かるんです。その日は気分が落ち込む電話が多かったとしても、1本受け取るたびにグラフがきれいな形になっていくと考えたら、どんどん電話したいという気持ちになるんですよ」

心理学は「何にでもなれる」学問

総合心理学部の強みは汎用性にある、というのが坂本さんの持論。大学進学の決め手は、「汎用的に何でもできる」「何にでもなれる」と感じたからでした。

「総合心理学部というと、カウンセラーや公認心理士をイメージする人が一般的には多いかもしれませんが、私はそうは考えませんでした。心理学ってすごく幅が広いので、たくさん知識を吸収できて、まったく知らないところに行けるというイメージがあったんです」

現在の仕事でも、臨床心理学の経験が電話対応に活きているなど、知識がどこで役に立つかはわからないと坂本さん。コープ共済連には入協10年で複数の仕事を経験し、さまざまな業務に精通した人材を育てるというポリシーがあり、坂本さんはまさに“まったく知らないところ”を歩んでいる最中です。

「ゆくゆくは統計に関する部署で働くことを希望していますが、まずは今の業務をきちんとこなすことが大事。そのために、総合心理学部で得られた幅広い知識や経験は役立っていますし、今後も多くの場面で役立つだろうと思います。
たとえば、文化人類学の授業を業務の中で思い出すことがあります。その授業では、教授が南米でのフィールドワーク経験をよく紹介してくれていました。現地の生活や価値観に触れたエピソードを聞く中で、『自分が“当たり前”だと思っていることは、社会や文化が変われば簡単に揺らいでしまう』ということを強く実感しました。そこから、『自分が正しいと思っていることが、必ずしも正しいわけではない』『自分に縁があるものだけが価値あるものではない』という相対的な視点を学べたんです。こうした考え方や発想は、お客さまとのコミュニケーションにもそのままつながると思っています」

自分が置かれた立場を客観的に捉え、ゆったりと構える坂本さんからは大人の余裕が感じられます。それは大学時代にたくさんの知識を吸収し、今も変わらず努力を続けているからこそ。坂本さんのように、夢中になれる学びを総合心理学部で見つけてみてはいかがでしょうか。

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