心理プラスな人(卒業生メッセージ)

2026年度



国防を支える「対人リテラシー」としての心理学

土屋 諒恭 さん
専攻 2020年卒業

防衛省 大臣官房文書課

2019年度に総合心理学部を卒業し、防衛省に入省した土屋諒恭さん。国防の政策判断を支える最前線で、心理学の知見はどのように生かされているのでしょうか。土屋さんに詳しくお話を伺いました。

国会と防衛省の「つなぎ役」

土屋さんが現在勤めるのは、防衛省の大臣官房文書課。その業務内容は、国会と防衛省の連絡調整を担う「つなぎ役」と土屋さんは説明します。

「国会議員の方々から寄せられる質問通告と防衛省内の政策を結び付けるハブのような役割です。多くの部署や人と関わりながら組織を動かしていくことで、国会運営と防衛省の政策を円滑に結びつけます。特に、国会の会期中にはスピード感と正確性が求められる重要な仕事です」

防衛省では約2年のサイクルで部署異動があり、これまでもさまざまな角度から国防を支えてきました。2023年には、当時成立した「防衛生産基盤強化法*」の施行にも携わったと言います。

*防衛生産基盤強化法とは?
正式名称は「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律」。防衛装備品等の安定的な製造等を確保するため、力強く持続可能な防衛産業を構築するための措置やサプライチェーン上の様々なリスクに対応するための措置を定めている。

「法律の施行に向けて事業者さんの声に耳を傾け、現状を分析して課題を抽出し、解決のための枠組みを構築していく、繊細な作業の連続でした。自分が関わった仕事が広く世の中に周知された時には、その責任の重さを実感するとともに、社会への影響力を肌で感じることができました」

激務の中でもメンタルを一定に保つ

土屋さんが防衛省に入省した背景には、小学校から大学まで打ち込んできた柔道の存在がありました。早い段階から、警察や自衛隊といった公安系の職種を選択肢として考えていましたが、検討を重ねる中で、国防の「上流」へと思いが固まっていったと言います。

「自分自身が現場で動く一人になるよりも、組織全般をより良くするために働きたい。政策判断や組織運営という大きな枠組みから国防を支えたいという気持ちが強くなり、防衛省を志望しました」

巨大な組織を動かしていく最前線にあって、総合心理学部で得た知識や経験も土屋さんの支えとなっています。心理学の知見は、「自己コントロール」と「対人関係」の両方で役に立つと語ります。

「日々、膨大な量のタスクを、決められたスケジュール内に処理しなければなりません。自分のストレス状態を客観視し、冷静な判断を保つことを常に意識しています。また、防衛省では多くの部署が連携して動くため、組織としての調和も非常に重要です。相手が何を重要視しているのかを見極め、周囲のリズムを崩さずにタイミングよく連携する。組織を円滑に回すための視点や考え方は、総合心理学部での学びが土台になっています」

法律や予算にも通ずる学問の基礎

総合心理学部では、心身相関*について詳しく学んだという土屋さん。柔道を続けていく中で、精神状態が肉体のパフォーマンスに与える影響について知りたくなったことが、進学のきっかけだったのだとか。

*心身相関とは?
心と体が相互に影響し合う現象のこと。ストレスで胃が痛くなる、体が疲れると気分が落ち込むなどの例があります。

「毎日練習していると、同じことをしていても日によってパフォーマンスが変わるのが分かります。それは心理的な影響が大きいのではと、高校生の頃に考えたことがきっかけでした。漠然とした感覚ではなく、学問を通じてその正体を知りたいと思ったんです」

しかし、実際に入学してみると、当初抱いていた“メンタルトレーニング”のようなイメージとは異なる、学問の奥深さに驚かされたそうです。

「生理心理学の授業で、脳内の反応と体の動きの相関を学んだことが印象的です。その時に初めて、心と体のつながりに科学的な根拠があることを知りました。自分が抱いた疑問を、どのように検証していけば良いのか。そして、そのためにどれだけ多くのデータや分析が必要になるのかという、学問の基礎にあたる部分に感動を覚えました」

防衛省での仕事と学問の間には共通点もあります。

「学問の世界では、仮説を立て、データをとって検証するというプロセスを積み重ねていきます。これは、法律づくりや予算の編成でも同じです。心理学が“心”に関することだけでなく、実務にも役立つ部分があるというのは、私にとってうれしい誤算でした」

思いも寄らない発見がある

心理学は特定の専門職のためだけの学問ではない、と土屋さんは強調します。

「公務員であっても民間企業であっても、自分がより良いパフォーマンスを発揮していく上で、心理学の知識は必ず役に立ちます。心理学は、自分の心と向き合い、他者と良好な関係を築くためのリテラシーを身につけられる学問なんです」

総合心理学部には、「入学時は興味がなかった分野」も多かったという土屋さん。しかし、必修科目として幅広く学んでいく中で、予想もしていなかった新しい発見がたくさん得られたそう。

「自分の固定概念で学びが狭まらないのが、総合心理学部で学ぶメリットだと思います。それは、社会に出て、多様な考え方とぶつかった時に実感できるでしょう。私も今後、役職が上がっていけば、より多くの人をまとめる立場になっていきます。周囲を巻き込み、組織として大きな成果を出すために、総合心理学部での学びはきっと武器になるはずです。これからも張り切って、国防の最前線を支えていきます」

土屋さんは笑顔で、力強くインタビューに答えてくれました。心のメカニズムを学ぶことは、忙しい日々の中でも自分の“やりたいこと”を見失わず、心身を健康に保つことにも通じます。ぜひ、総合心理学部の学びを、夢を叶える第一歩にしてみてください。

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