2026.06.17

【開催報告】6月13日(土)立命館土曜講座

「廃墟とノスタルジア1980年代以降の日本における廃墟写真集を中心に」
講師:立命館大学産業社会学部 教授 住田 翔子

会場には49名、オンラインでは延べ75名が参加しました。

2026年6月13日の土曜講座では、住田翔子教授を講師に迎え、「廃墟とノスタルジア1980年代以降の日本における廃墟写真集を中心に」をテーマにご講演いただきました。

■廃墟とは何か
講義冒頭で、廃墟とは、人口減少や経済的衰退、自然災害などを背景とした「建築物としての機能を失ったもの」と定義されることから、一般に「暗い」「寂しい」といった負のイメージを伴う一方で、写真集を通して見ることで異なる魅力も見出されることが指摘されました。
特に1990年代以降、日本では廃墟写真集が人気を集め、廃墟がポジティブな関心の対象として受容されていたことが紹介されました。

■ 廃墟イメージの歴史
西洋における廃墟の表象は16~17世紀に始まり、当初は崩壊や破局を示す「動的な廃墟」が描かれていましたが、17世紀後半以降には「静的な廃墟」が主流となり、理想的風景としても受容されるようになりました。18世紀には廃墟趣味が広まり、庭園にミニチュア廃墟が造られるなど文化的広がりを見せました。
一方、日本では19世紀以降に西洋美術の影響を受けて廃墟が表現対象となり、近代建築の存在とともに可視化されていきました。

■ ノスタルジアとの関係
本講座では4名の写真家の作品を通じて廃墟表現の違いが分析されました。結論として、廃墟写真集は単なる「過去への郷愁」ではなく、「今ここに確かに存在するものへのノスタルジア」を提示するものとされました。廃墟は「失われた痕跡」であると同時に「現在も存在する現実」であり、その二重性が現在への実感や愛着を喚起するとされました。
このことから、変化の速い現代社会において、廃墟は「存在の確かさ」を感じさせる対象と捉えられます。廃墟は単なる過去の遺物ではなく、現代の感覚や認識と深く関わる存在であり、ノスタルジアを「現在を確かめる感覚」として再考する重要性が示されました。

参加者からは、
「ないものとされた空間が、かえって今まさにリアルなものとして立ち現われてくるというある種の眼前性が、今ここの現在を際立ちに繋がっているという議論は興味深いと感じました。」「廃墟について、美術史的視点からとらえる先生の内容は大変勉強になりました。」
といった声が寄せられました。


6月13日エッセイ

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