細胞が動く様を見た感動が原点
「細胞は生きている!」。初めて細胞が動く様子の動画を見た時の胸が震えるような感動が、研究者としての私の原点です。
「細胞生物学の研究者になろう」と心に決めたのは、大学3回生の時。小学生の時にマリー・キュリーの伝記を読んで科学者に憧れを抱いていたものの、正直に言って植物の成長を観察するような理科の生物の授業はあまり好きではありませんでした。それが一変したのは、中学生になってから。利根川進先生がノーベル賞を受賞されたことから、生命の仕組みを分子レベルで解き明かす分子生物学という学問があることを知り、初めて「生物学っておもしろそう」と興味がわきました。
とはいえ大学3回生になっても具体的にどんな研究をしたいのか、まだ決めかねていました。興味を持った大学の研究者の先生に片っ端から連絡し、研究室を訪ねたり、お話を伺う中で出会ったのが、今日まで恩師と仰ぐことになる貝淵弘三先生です。当時奈良先端科学技術大学院大学で教鞭を取っておられた先生のもとで培養細胞が動くライブ映像を見たことが、研究者としての道を決定づけることに。「なぜ細胞は動くのか。メカニズムを知りたい」。その時に抱いた好奇心が、今も研究の原動力になっています。
もう一人、研究者になる上での道しるべとなってくださったのが、現・立命館大学の上席研究員である川嵜敏祐先生です。「次に選ぶ研究室が研究者としてのあなたの人生を決めることになる。だから本当に研究したい専門分野を真剣に考えなさい」とアドバイスしてくださったおかげで、大学院から一貫して同じ関心を追い続けることができました。