最先端の研究に触れて進学を決意
研究者に漠然とした憧れを持ったのは、中学生の頃。高校時代は理系科目より文系科目の方が得意で、どちらを選ぶか悩みました。結局理系コースに進んだのも、「文系科目は得意だから、嫌になったらいつでも文系に変わればいい」という軽い気持ちからでした。
そのまま大学は工学部航空学科に進学。4回生で研究室に配属された時、博士課程で研究する先輩を見て、「私もいずれは博士号を取りたい」と夢を膨らませたものの、当初は「修士課程を終えたらまずは就職しよう」「博士号に挑戦するのはずっと後でいい」と考えていました。ところが修士課程で、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)と呼ばれるマイクロマシンの研究を始めたことで、思い描いた進路を大きく変えることになったのです。
1mmの1000分の1、マイクロメートルサイズの超小型機械システムであるMEMSは、いまやスマートフォンなどの小型の電子機器に欠かせないものとなっています。当時世界が技術革新にしのぎを削っていた最先端の分野に触れた私は、すっかり引き込まれてしまいました。
決定打になったのは、修士課程2回生の時。指導教授についてアメリカ・シカゴで行われた国際学会“Transducers”に出席したことでした。MEMS関係では世界最大規模の学会で、世界中の研究者が一堂に会し、MEMSが使われているセンサーやアクチュエータについて最新の研究成果を発表します。最先端の研究を間近で見て、気鋭の研究者たちの話を聞いてワクワクしました。「いつか私もこうした人たちと肩を並べて研究したい」。そんな思いが高まり、帰国後すぐに両親に「博士課程に進学したい」とお願いしたことを覚えています。