情報理工学部 情報理工学科 准教授 (インタビュー当時)

西原 陽子

2003年、大阪大学基礎工学部を卒業後、同大学大学院基礎工学研究科で博士課程を修了。AI(人工知能)の一分野にもなっている言語処理を研究する。2008年、東京大学大学院助教に就任。同大学講師を経て、2012年、立命館大学情報理工学部准教授に就任。

性別、年齢は関係ない研究成果を出し続けることが大切

#08

最先端のITに興味を惹かれて

「研究者になろう」と最初に意識したのは高校生の時です。仲の良い友達が「NASAの研究者になる」と言うのを聞いて、「じゃあ、私も」と、そんな軽い気持ちでした。研究者が実際にどんなことをするのか、当時は何も知りませんでしたが、結局この決断が、理系選択や大学進学、そして今につながっているから不思議です。
大学4回生の時、卒業論文を書くにあたって研究室を一つひとつ回り、興味を引かれたのが、コンピュータによる言語処理の分野でした。AI(人工知能)について研究しているのを見て「おもしろそう」と思ったことが、現在の研究との出会いでした。
大学院修士・博士課程、そしてポストドクターとして大学に残った1年間は、自分の研究に思う存分打ち込んだ時期です。研究がおもしろかったことはもちろんですが、研究を続けるために結婚や出産といったライフイベントの前に確かな職を得ておきたいという気持ちもありました。就職が難しいといわれる大学教員のポストを得るには、多くの論文を発表する必要があります。専門誌や学会誌などに論文を投稿すると、さまざまな疑義や時には厳しい批評が寄せられます。それに対して誤解を解き、ロジックを通すことができて初めて研究者といえるのではないかと私は考えています。さまざまな研究テーマに挑み、できるだけ多くの成果発表をしたことで今のポジションがあると考えています。

「何でもアリ」がおもしろい

研究のおもしろい点は、大雑把に言えば「何でもアリ」なところです。企業に就職したら、恐らくトップの方針に沿った仕事に取り組まなければなりません。それに対して大学での研究は、自分の関心のままに追求することができます。私自身が一番楽しいのは、自分のアイデアや実験結果を発表する瞬間です。それを実感したのは、初めて学会で発表した修士課程1回生の時でした。多くの聴講者の先生方が年若い私の研究発表に耳を傾け、質問や批評を投げかけてくださるのがとても嬉しくて、研究意欲に火がついたことを今でも覚えています。
現在はテキストマイニングを用いて言語データを分析し、さまざまなことに役立つシステムの構築に取り組んでいます。テキストマイニングとは、大雑把に言えば単語や文章の集まりから言語解析によってキーワードを抽出し、それらの関係性を抽出する分析手法です。例えば、ツイッターなどのSNSに書き込まれた商品への不満などの情報をテキストマイニングの手法を使って抽出、分析し、店舗の宣伝やマーケティングに生かすためのシステムを構築したのも成果の一つです。
またテキストマイニングを外国人留学生向けの教育ツールに活用する研究も進めています。日本に来る留学生の多くがマンガやアニメを通じて日本語を習得していることを知って、「これらを教育ツールに使えないか」と思ったのが研究のきっかけです。マンガと言っても、高校生を主人公にした青春ものや多様な職業をテーマにしたものなどジャンルは多岐にわたります。例えば小学生がサラリーマンを主人公にしたマンガを読んでもあまり日本語学習の助けにはなりません。そこで、数多くのマンガのセリフを抽出、分析し、各対象者にとって最適なマンガを自動的に選出するシステムを構築中です。

キャリアとしてもすばらしい職業

これから研究者を目指す若い女性には、「ちゃんと稼ぐことができる職業ですよ」と伝えたいです。もちろん研究者として一人前になるまでは、大変なこともあります。けれど、論文や研究成果は、性別や年齢などの属性に関係なく評価され、研究職につければ生きて行くには十分な収入を得ることができます。研究が好きであることが大前提ですが、キャリアの一つとしても研究職はやりがいのある仕事だと思っています。