研究との出会いは高校の「生物」の授業
私が高校生だった1970年代の中頃は、生命科学の技術と、倫理や社会、人類との関係が世界的に議論され始めた、まさに「生命倫理の出発点」ともいうべき時期でした。また高校の生物の教科書に分子生物学の知見が入ってきたのも、この頃です。論理が明快な分子生物学を知って、それまで「生物=暗記科目」としか思っていなかった私は新鮮な衝撃を受けました。また当時の高校の生物の先生が、授業中に生命科学と社会に関する本を紹介してくれたことが、今の研究にもつながっています。
大学では生物学を専攻しましたが、生物や実験よりも、もっぱら興味があったのは、思想史や制度史的な方法論の方でした。「科学と社会の関係を歴史的に追う」という内容の本を読んで「科学史」という学問分野があることを知ったのは、そんな時です。「私がやりたいのは、まさにこれだ」とのめり込みました。生物学では実験や観察に基づく研究で卒業論文を書くのが普通ですが、「科学史」をテーマに研究したかった私は、それを認めてくださる指導教官を探しあて、まずは博物学史に関する卒業研究をまとめました。
その後、大学院で科学史の他、優生学や、優生学と密接に関連するジェンダー論を研究。現在も生命科学と社会をつなぐ融合的な領域の研究を続けています。