学部時代にすすめられたテーマを今も研究
大学を卒業したのは、いわゆる就職氷河期を少し抜けたあたりの時期です。就職活動にあまり積極的になれず、それよりも手に職をつけたい、その一つとして研究者もいいなと考え、大学院に進学しました。
「研究する」という行為にあこがれていただけで、特にやりたいテーマが決まっていたわけではありません。私の研究領域である「法と心理学」は、学部時代、指導教員のサトウタツヤ先生に卒業論文のテーマを相談した時「やってみたら」とすすめられたもので、主体的に決めたものではありませんでした。しかし学部生の時に面白い、これしかないと思ったテーマが、やっていくうちに案外そうでもなかったというのもよくある話です。先生がすすめてくださるのは社会にとって必要なテーマ。よく分からないまま取り組んでいくうち、だんだんその面白さが分かり、社会にも喜ばれるようになりました。だから今も続けられているのだと思います。
博士課程に進むことは最初から決めていましたが、研究者になれるかどうかはまた別の話です。30才を過ぎてこの世界でやっていけないなら潔くあきらめるつもりでした。大学の教員になれたのは運が良かったとしか言いようがありません。博士課程修了後、1年目は研究員、翌年は文学部助教のポストに空きが出て職につくことができ、その後、総合心理学部の開設が決まると、文学部心理学科時代のこともよく知る人材として採用されることになりました。私の努力というより、縁がつながった結果だと感じています。