授業潜入レポート

6月28日(金)2限 に行われた「キャンパスアジア演習Ⅱ」の授業と、同日、衣笠キャンパス創思館カンファレンスルームで行われた、
キャンパスアジア・プログラム特別講座/現代東アジア言語・文化専攻創設記念講座・金文京先生講演会に潜入しました!

キャンパスアジア演習Ⅱ

キャンパスアジア演習Ⅱ

日本語・中国語・韓国語と母語が異なる学生どうしが、日本語で一緒に調査研究・発表・討論を行う授業です。さまざまなテーマについて日本国内で入手できる資料(日本語のもの)を使って、自ら調べたり発表した後に質疑応答することを通じて、東アジアに関する専門知識を身につけ、外国語としての日本語による緊密なコミュニケーションの実践について学びます。

[全体の雰囲気]

どの学生も念入りに調べていたことがうかがえる他、一方的な発表ではなく、受講生に質問を投げかけるなど、双方向に学ぶことができるプレゼンテーションでした。積極的な発言などから、すべての学生が熱心に参加しているように感じました。なかでも印象に残ったのは、アベノミクスについて発表した孟さん。彼は、日本政府の動向について、キャンパスアジアの仲間と知識共有して、共に考えたいという思いから発表内容を決定。このような学びに対する意欲を肌で感じた授業でした。

王 渝灵さん(広東外語外貿大学)
日本アニメ産業
王 渝灵さん(広東外語外貿大学)

“日本のアニメ産業はなぜ発展を遂げたのか?"という疑問を持ち、アニメをテーマに決めた王さん。自国(中国)のアニメ産業や歴史、最新のアニメ事情について日中を比較しながら発表してくれました。
「どうやって日本のアニメを知るの?」「なぜ日本のアニメが好き?」という日本人学生の質問に王さんをはじめ中韓の学生が熱く語っているのが印象的でした。

メン ハンジェさん(東西大学校)
アベノミクス
メン ハンジェさん(東西大学校)

「僕たちは東アジアのリーダーになる人材だ!」と考えたメンさんは、キャパスアジア・プログラムの受講生が日本の動向であるアベノミクスについて知っておく必要があると力説。発表では分かりやすいように噛み砕いてアベノミクスの概要について説明していました。また、詳しい内容をまとめたレジュメを用意して、配るなど準備にも気合が入っていました。
韓国の主要ニュースでは週3、4回、日本のアベノミクスについての話題が取り上げられているそうです。クラス内はアジアの主要国3ヶ国が集まっているため、「海外でアベノミクスが与える影響は?」「円安についてどう思うか?」などの質問が飛び交い、各国の政治や経済ついて意見を交わしていました。

吉積皓平さん(立命館大学 文学部2回生)
福岡と京都
吉積皓平さん(立命館大学 文学部2回生)

天神、博多祇園山笠など京都と共通する福岡について発表した吉積さん。福岡には京都の地名が使われている地域が多いと言う。その理由に京都から左遷され菅原道真が福岡に辿り着いた歴史を説きました。
中韓の学生からは「日本各地で文化は違うのか?」という質問があり、彼らの日本に対する関心の高さを感じました。吉積さんは、パワーポイントにたくさんの写真を取り入れるなど、中韓の学生が分かりやすいように工夫をしていました。

キム ソンミンさん(東西大学校)
韓国と違う「日本のメンズファッション」
キム ソンミンさん(東西大学校)

キムさんは、日本と韓国で流行しているメンズファッションの比較について発表しました。具体的な例としてクラス内の韓国人の男子学生を教壇の前で紹介するなど、わかりやすい方法で説明していました。
同じ形の洋服でも、日本と韓国では呼び名が異なることや、着こなし方の違いについても触れていました。

丸山紗代さん(立命館大学 文学部2回生)
日本の土産
丸山紗代さん(立命館大学 文学部2回生)

中韓の学生に、京都や北海道、沖縄など日本の菓子土産を紹介しました。また、旅先で買う「お土産」と家や会社を訪れる際に持っていく「手土産」の違いについても触れ、土産にまつわる日本の文化について説明しました。中韓の学生は、とても興味深く聴いている様子でした。

许 逸伦さん(広東外語外貿大学)
日本語の音便
许 逸伦さん(広東外語外貿大学)

许 逸伦さんは昔の日本語の音便について発表。スライドの一枚目に「君死にたまふことなかれ」の文字が表示されました。この文章の読みを留学生に問いかけることから始まり、古い日本語の音便(「ア段の音+う」→「オ段+う」)について解説。ひらがなの文字通り「きみしにたまふことなかれ」と読んだ留学生たちに、許さんは具体的な例(「有難う」はひらがなで「ありがたう」と表記されるが「ありがとう」と読む)を挙げて音便が変化した経緯をわかりやすく説明しました。
普段の発音とは異なる点に留学生たちは戸惑いながらも、音便変化の法則にとても興味を持った様子でした。この発表は今回の講義の中で優秀なプレゼンテーションをした学生に送られるMVPとして表彰されました。

崔 紫茵さん(広東外語外貿大学)
和菓子
崔 紫茵さん(広東外語外貿大学)

崔さんは日本の「和菓子」について発表しました。お茶席での和菓子の役割を述べた後、「和菓子」には、“観賞する楽しみ"と“味わう楽しみ"があると説明。その他、和菓子の歴史や種類など、たくさんの和菓子の写真を用いて紹介。中韓の学生だけではなく、日本の学生も興味を示していました。

「三国志」から見る現代東アジア国際情勢

「三国志」から見る
現代東アジア国際情勢

キャンパスアジア・プログラム特別講座
現代東アジア言語・文化専攻創設記念講座

京都大学人文科学研究所 教授
金 文京 氏 講演会
[講演会の内容]

講演では、「『三国志』から見る現代東アジア国際情勢」というテーマのもと、東アジア諸国の他国に対する認識の違いが、日本・中国・韓国・台湾それぞれの地図の比較によって示され、中華思想の歴史とともに、現在の東アジアの体系ができあがった経緯について説明がありました。
今、日本も領土問題を抱えていますが、中国・韓国・台湾では憲法上に領土規定があります。これは世界的にも珍しく、「東アジアの常識は世界の非常識」という表現が使われているほどです。ただ、必ずしもそれが悪いというのではなく、どうしてそうなったのか考えることが大切だと金先生は話されました。そして近代以前から現代までの歴史を理解し、そのうえで現在の東アジアの問題について話し合うべきだと述べられていました。 約100人の来場者があり、キャンパスアジアの学生だけでなく、立命館の学生や教員、京都市内の大学関係者や一般の方もふくめ、多様な方々の関心の高さをうかがわせました。

[パイロット生の様子]

日中韓のパイロット学生たちはこの講演をとても熱心に聞き入っていました。約20分間行われた質疑応答では、アジア諸国のさまざまな視点からの質問が飛び交いました。特に、現在の東アジアの国際問題をどのように解決していけばよいのか、自分たちができることは何か、といった質問が多く寄せられていたのが印象的でした。