Numerical Solution By Explicit-FTCS - 8


■ 増幅率の計算の前に・・・ ■

 陽解式FTCS差分法の安定性と精度について考察してみましょう。一階線形常微分方程式のときと同様に,増幅率の観点から考えてみます。しかし,偏微分方程式の数値解増幅率は,常微分方程式のように簡単に求めることはできません。求めるためには,フーリエ展開複素数計算を利用する必要があります(別の方法もあります・・・)。




 さて,移流方程式の増幅率を次のように定義しましょう。

     (23)

一方,移流方程式の陽解式FTCS差分方程式を以下に再載します。

     (15,再載)

陽解式FTCS差分法の数値解増幅率ρを求めるためには,(15)式を(23)式の形へと変形する必要があります。どうです,変形できますか?見るからにできそうにありませんね(cnj+1とcnj-1が邪魔ですね・・・)。このままでは(15)式を(23)式に変形することはできません。しかし,(15)式に対して,とある手続きを行えば,(23)式に変形することができます。その手続きとは「フーリエ展開」です。




■ 陽解式FTCS差分法の数値解増幅率ρ(具体例) ■

 フーリエ展開うんぬんの話は後にして,とりあえず,ある状態を仮定して陽解式FTCS差分法の数値解増幅率を計算してみましょう。増幅率を求めるには,(23)式が示すように,ある任意の時刻tにおける汚染濃度の値が既知でなくてはなりません。そこで,任意の時刻tにおける汚染濃度分布を次のように仮定してみましょう。

     (24a)

または,

     (24b)

ちょっと見慣れないかもしれませんね。(24)式は,任意の時刻t(固定)における汚染濃度分布を仮定したものです。したがって,独立変数はxのみとなっております(t=tのときなので・・・)。(24)式の仮定により,(15)式を用いれば,t=t+冲における汚染濃度分布が次のように計算できますね。

     (25)

さて,c(x,t)とc(x,t+冲)が(24)式および(25)式で求まりました。したがって,(23)式から増幅率を計算してみましょう・・・,と思ってもキレイに計算できませんね。増幅率を求めるには,(25)式を(24)式で割ることになるので,cos同士の割り算が出てきてしまいます。皆さんもご存知のように,三角関数の掛け算や割り算は非常に面倒です。

 三角関数の演算を簡単にする手法として,複素数を利用する方法があります。では複素数を使って,増幅率を計算してみましょう。まず,(24)式を複素数で表わすと次のようになります(証明は,各自で調べてください)。

     (26)

isin(kj凅)の項は虚部と呼ばれ,数ではありません。とりあえず(24)式と(26)式は同一のものと考えてください。同様に,cnj+1は,eik(j+1)凅と表わされ,cnj-1は,eik(j-1)凅と表わされます。したがって,cn+1jは,(15)式を用いて次のように計算できます。

     (27)

 ここで,(27)式中のeik凅-e-ik凅について考えてみましょう。eik凅については,次式で表わされますね。

     (28)

一方,e-ik凅については,次式で表わされます。

     (29)

したがって,(28)式から(29)式を引けば,eik凅-e-ik凅が計算できます。

     (30)

 (27)式に,(30)式を代入すれば,次式のようになりますね。

     (31)

したがって,数値解増幅率ρは,次式のように求まります。

     (32)

 さてさて,なんだかんだ言って,数値解増幅率ρが計算できました。なぜ計算できたかというと,t=tnにおける汚染濃度分布が(24)式のような三角関数で仮定されていたからです。 では,もしt=tnにおける汚染濃度分布が三角関数でなかったら(32)式は間違いである・・・ということになりますね。そのことについては次頁に述べます。




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