在学生・卒業生の活躍

在学生・卒業生インタビュー

運動中に起こる疲労や判断力低下への興味が脳科学研究の道へ導く

塚本 敏人 さん

■はじめに

 本学の大学院、スポーツ健康科学研究科において修士課程を修了後、脳に関する研究で博士号も取得した塚本さん。デンマークやイギリスでの研究も経て、最先端の学びを立命館に還元したいという思いから、本学の助教に就かれました。もともとはサッカーに打ち込んでいた塚本さんが、どのような経緯で現職まで至ったのでしょうか。



➊まずは、本学の大学院へ入学されるまでを振り返って頂けますか?

 幼少期からはじめたサッカーに、文字通り熱中していました。高校大学と、サッカーを中心に進学してきた中で、理想を言えばサッカー選手としての将来ビジョンをもっていましたが、大学2回生頃に自分の能力と向き合った結果、選手ではない形で何かサッカーやスポーツに携わりたいなという思いが芽生え始めました。3回生になり就職活動が本格化する頃、姉が中学教員をしていたことも影響し、選択肢としては教員か民間就職の2択で考えていました。実際に様々な業界の企業選考も受けましたが、いまいち興味が湧かず、、。ということで教員を志して教育実習に赴きました。内容として、生徒と触れ合ったりする事は自分にも向いていると感じたのですが、教科書通りに進めなければならない授業内容が窮屈に感じてしまい、、(苦笑) もちろん、きちんとした仕組みに則して進める良さもあるかとは思いますが、どちらかと言うと私は、大学のように枠に捉われない教育をしていきたいという気持ちになりました。



❷本学の大学院への進学経緯はどのような流れだったのでしょうか?

 サッカーをしていた際、試合終盤になると身体的な疲労はもちろんあるのですが、同時に脳の疲労、判断力の低下が起こっている事に、もともと興味をもっており、その分野の研究をしてみたいなという思いはぼんやりとありました。ただ、当時は関東の東洋大学で、理工学部に在籍していた事もあり、先述の研究を進めるのであれば、もっとスポーツ科学に特化した大学院へ進学すべきだと考えていました。理工学部所属ではあったものの、いちおう運動生理学研究室には在籍をしており、その授業内で先生が「乳酸は疲労物質ではない」と発言された事に対して、イナズマのような衝撃を覚え、もっとスポーツ科学を深く知りたいと熱望するようになりました。そこで、その先生へ相談をしたところ、立命館大学スポーツ健康科学部の橋本健志教授を紹介してもらい、進学を決断しました。



❸大学院へ進学後、何か心がけていた事はありますか?

 脳やスポーツ科学に関連する論文を、1日1本は読むようにしていました。もちろん興味のある分野なのでそこまで苦ではなかったですが、日本語や英文問わず、まずは質より量を求めたいと考えていました。この経験は、自身の知見を高めるだけでなく、実際に自分が論文を執筆する際に、文章をまとめる力として役に立ったと思います。また、実験をする際に、当初の仮説とは違った結果がでる事に対して、あまり動じなくなりましたし、むしろ想像と異なる結果の方が面白く思えるようにもなりました。
この頃から、自分の哲学なども意識するようになり、座右の銘として「人事を尽くして天命を待つ」という言葉を掲げるようになりました。とにかく研究はトライアンドエラーの繰り返し。自分が納得いくまでやり遂げた結果として、新たな発見や良い論文に繋がるのだと考えています。



❹本学のみならず、海外での研究経験もあるようですね。

 デンマークのコペンハーゲンと、イギリスのウェールズでの経験があります。
コペンハーゲンは博士課程で橋本教授の共同研究で、ウェールズは総合科学技術研究機構のポストドクターと呼ばれる制度に応募し、約2年間渡英してきました。特にイギリスはサッカー発祥の地という事もあり、脳科学とサッカーを掛け合わせた研究も多く、とても学びが多かったです。近年取り上げられる事の多い、ヘディングプレーがもたらす脳への悪影響についても、先行的な研究がおこなわれており、新たな視点を養う事ができました。そういった経験を、ぜひ立命館の学生にも伝えたいと思い、本学の助教募集があったタイミングで帰国をしました。



❺留学を検討している学生に、何かアドバイスがあれば教えてください。

 日本を飛び出すにあたって、ひとつハードルとして捉えられる事の多い語学面ですが、現地の人達はそこまで気にしていないように感じます。語学ができずとも、ボディランゲージや伝えたい気持ちがあれば伝わるシーンも多いですし、日本とは違った文化や環境を吸収したいという熱意があれば、ある程度は大丈夫だと思っています。
文化の違いでいうと、私自身も在英中に学んだ大切なことを、いま思い出しました!(笑) 渡英間もない頃、曜日時間を問わず研究熱心になっていた際、つい休日にまで当時の先生に質問の連絡をしたところ、「休日くらいは別の楽しみを見つけなさい!」とお叱りを受けた事がありました。つい日本人は真面目に頑張りすぎてしまう気質があるのですが、どちらかと言うと海外においては、オンとオフの切り替えが如実にあるので、趣味や家族に費やす時間の大切さを学びましたね。実際に私もその一件から、地域のサッカーチームに所属した事で、語学力の向上や快適な生活に繋がったと思います。



❻最後に、学生へのメッセージをお願いします。

 自分が楽しいと思える事を見つけ、熱中して欲しいです。私の場合、それがサッカーや脳研究に関する事で、実際に仕事にも繋がっていますし、しんどい事も乗り越えられる要因となっています。もし研究ばかりで息詰まっている学生がいれば、ほっと一息つく時間も作って欲しいです。休憩をいれながら進める方が、かえって良い成果に繋がる事も多々あるので、ぜひ自分のペースで頑張ってみてください。

※インタビュー及びプロフィールは、取材をした2023年3月時点の内容です。
PROFILE

塚本 敏人

所属先:立命館大学
博士(スポーツ健康科学)(2017年3月 立命館大学)
修士(2015年3月 立命館大学大学院)
戻る