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スポーツマネジメント特論:特別講義 「スポーツスポンサーシップの新潮流」

去る2026427日に、株式会社NextStairsエバンジェリストの宇野カルロス冠章氏をお招きし、「スポーツスポンサーシップの新潮流」というテーマで、スポーツ健康科学研究科前期課程の大学院生に対して、特別講義をしていただきました。

宇野氏は、ITテクノロジーを活用したコンサルティングを中心に9つの企業を渡り歩かれ、民間ビジネスの最前線だけでなく、現在は、大学教育や東京都江東区スポーツ振興事業団のサポートにも手掛けられるなど、これまで培ってこられた英知を豊かな社会づくりに活かそうとされています。

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本講義では、スポーツチームの経営において重要性が増しているスポンサーシップを題材に、その最新動向と可視化の必要性が示されました。

スポーツチームやクラブの収入源は、複数存在するものの、その中でもスポンサーシップの比率は、依然として中核的な役割を担っています。その一方で、従来のスポンサーシップは、「どれだけの効果があったのか」がわかりづらく、企業側・チーム側の双方にとって、投資対効果、つまり、投資利益率(ROI: Return on Investment)の説明がしづらいという課題を抱えてきました。

宇野氏は、スポンサーシップを単なる広告ではなく、マーケティング投資として捉え直す視点が必要であると述べられ、スポンサーシップの価値を可視化するための4つのアプローチがあると紹介されました。

1つめのアプローチは、「メディア露出効果」であり、テレビ、OTTOver-the-Top media service)、WebSNSなど、多様なメディアにおけるロゴ露出をAIによる映像解析で計測し、広告換算価値として定量化する手法について説明されました。露出秒数、位置、サイズ、多重露出などを加味することによって、従来、見落とされがちであったメディア露出の価値を数値で示すことが可能になり、このような可視化がスポンサーシップにおける評価の正当性につながると説明されました。

2つめは、「会場露出効果」であり、これは、スタジアムやアリーナという空間における観戦体験に着目し、来場者への調査を通じて、スポンサー広告の記憶、認知、印象を測定する方法について述べられました。

授業で実際に紹介された事例では、ユニフォームや電光掲示板など、広告の掲出場所による効果の違いが数値で示され、会場ならではの価値を把握できることによって、企業がリーチしたいターゲット顧客に対して、スポンサーシップの有効性を示すことができることなどを説明されました。

3つめは、「社会的投資効果」であり、スポーツチームやイベントがもたらす教育、健康、地域活性、ウェルビーイングといった非財務的価値を、SROI(社会的投資収益率)の考え方を用いて、金銭価値に換算する試みについて紹介されました。

従来、企業が社会的責任として、企業の「格」を示すものや「企業市民」の存在意義を示す、いわば、「見返りがない投資」として扱われてきた社会貢献活動やCSR活動が、SROIを用いることによって、スポンサー活動が社会に与える意義を、企業や行政に対して説明することが可能になると述べられました。このSROIという視点こそが、スポンサーシップという行為が単なる露出に留まらず、企業のみならず、行政機関の新たな投資的価値を示すものになると述べられました。

4つめのアプローチは、「行動変容分析」であり、スポンサー広告を見たファンの意識や行動がどのように変化したのかを調査し、認知にとどまらず、検索、購買、好意度といった実際の行動が変化するところまでを捉えることによって、マーケティング活動の成果を、ROIとして意味づけ、価値を示すことができると説明されました。


これらの可視化を支えるのが、AIやベイズ統計などの先端的な分析技術であり、学術的エビデンスと実務の接続が今後、ますます重要になると強調され、講義のまとめでは、AIを活用した新たな価値創出の可能性とともに、大学・企業・行政が連携する「産学官エコシステムの構築」がスポーツスポンサーシップの発展に不可欠であると述べられました。

講義後、短時間ではあったものの、大学院生から多数の質問が寄せられ、有意義な特別講義の場となりました。

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