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2015/6/20 スポーツバイオメカニクス論のゲスト講師として、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の橋詰 賢先生に、「スポーツ障害発症リスクの解明 -バイオメカニクスによるアプローチ-」のテーマでお話いただきました。


2015/6/20 スポーツバイオメカニクス論のゲスト講師として、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の橋詰 賢先生に、「スポーツ障害発症リスクの解明 -バイオメカニクスによるアプローチ-」のテーマでお話いただきました。

 

話の冒頭では、研究アプローチ(症例研究、疫学研究、フィールドでの比較研究、研究室での比較研究)と得られた研究成果についてわかりやすく説明してもらい、これから卒論に向かう3,4回生にとっても研究の進め方を整理できました。

 

 今回のテーマである「スポーツ障害」については、組織の損傷についてのメカニズムを「ゴムを引っ張ると、あるところまでくるとちぎれてしまう」ことを事例にして、組織(筋、軟骨、腱、骨)の柔らかさと組成変形からわかりやすく説明してもらいました。急激な損傷による急性障害としてアキレス腱断裂、前十字靱帯断裂があり、繰り返しによる損傷は慢性障害として疲労骨折、腸脛靱帯を生じさせます。腸脛靱帯炎は、大腿骨の骨端で腸脛靱帯が繰り返しこすられることで起こる症状で、腸脛靱帯炎のあるランナーは、炎症のないランナーに比べて、接地中の腸脛靱帯のひずみがより高いと研究で報告されている。

 

また、踵骨骨端炎についての研究についても紹介いただいた。これはふくらはぎの筋肉が収縮してアキレス腱が、踵の骨を引っ張るから生じ、特定の年齢で起こりやすい(1013歳)。踵の骨は15歳で骨化完了するので、それまでの年齢で多くみられる。MR画像から、足関節の関節軸、アキレス腱までのモーメントアーム、足部作用点までのモーメントアームを算出して、アキレス腱にかかる引っ張り応力を計算すると、一定の運動強度であっても、1013歳が高くなることを明らかにしました。

 

最後に、ランニング中の接地についての研究も紹介してもらいました。ランニング中の踵接地、中足部接地 前足部接地について、アキレス腱にかかる力、関節間力をみると、

踵接地 <中足部接地 <前足部接地 の順に大きくなる。この原因は、地面反力の大きさというよりは、地面反力のモーメントアームが違うことが原因であり、この負担がアキレス腱炎、脛骨疲労骨折につながる可能性について説明いただいた。

 

スポーツ障害を、症例的にみるのではなく、科学的なデータから明らかにされ、そのメカニズムに迫り、かつ実践者へフィードバックできるような説明・解釈を与えられるまでに踏み込んで研究されていて、研究成果の実践への応用を感じるお話でした。


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