2015/12/23 運動生理学において、循環器系分野で世界的な研究者である東洋大学教授の小河繁彦先生をお招きし、「科学によってスポーツパフォーマンスを向上できるか?」というタイトルで講義をしていただきました。
ある国際学会で「遺伝子の要素は1%?」という発表も含め、環境要因、つまり運動トレーニングや栄養処方などの外的刺激の重要性を指摘されました。したがって、科学的根拠に基づき、適切な刺激を加えることが重要です。
そして、科学とは、物事を数量化し、客観的に捉え、そして一般化することであるとした説明がありました。
そのなかで、運動科学の観点から、運動パフォーマンスの決定要因は複雑であるといった問題点も指摘されました。
各種運動生理学に関する幅広い知見も紹介して頂きました。
特にご自身の専門分野である循環調節に関して、運動中の筋への血流を維持するためにセントラルコマンド筋化学受容器反射などが働くことを概説されました。
さらに、国内外のスポーツ科学の歴史にも触れられました。
運動におけるノーベル賞 AV Hill 筋の熱産生・アイシングに関する研究 Otto マイヤホフ 解糖系・乳酸代謝に関する研究を紹介して頂きました。
そして日本のスポーツ科学では猪飼道夫先生から始まった、パフォーマンス評価において、スキルは評価するのは難しいから、測れるものからやろう!
ということで、筋力や体力(最大酸素摂取量)の測定が活発化した歴史を紹介して頂きました。
ただし、そうした最大酸素摂取量にしても、必ずしもパフォーマンスと直結する指標ではなく、この意味において運動科学分野では一般化できるものが少ないと考えることができることを指摘されました。
また、運動時に呼吸の上がるメカニズムは生理学的に完全に説明できるわけではないことも指摘され、生理学の限界・難しさも認識する必要があるということでした。
このように、運動科学によってパフォーマンスを向上できる部分と限界点があることを示されました。
学部生にとっては、運動生理学の位置づけを理解する貴重な機会であったと思われます。