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健康運動科学特殊講義 寺田新准教授(東京大学大学院総合文化研究科)


一般に食事からの糖質・脂質の摂取比率(エネルギー)は55~60%、25~30%と定められている。これに対して最近、アスリートの間で、ファットアダプテーションといって、糖質15%・脂質80%という食事を摂取することにより、スポーツ競技中の脂質消費を上げ、限りある糖質を節約し、競技中の疲労などを防ぐ食事法が提案されている。寺田先生は、その機序について、そのような食事により、食欲が低下するという生理学的影響に加えて、骨格筋のピルビン酸脱水素酵素を阻害するPDK4という物質が増えることにより糖質の消費が抑えられること、さらに脂肪酸のβ酸化を活性化するβHDAという酵素の発言量が増加することにより脂肪酸の酸化が増加するという生化学的影響があることを実験動物を用いた研究で明らかにしたことをお話しされた。また、このような極端なファットアダプテーションより、実現可能性の高いマイルドファットアダプテーション(脂質54%、糖質19%)食により、PDK4を抑制することなく、βHDAの発現を増加させることにより、糖質を主なエネルギー源とするダッシュのパフォーマンスを低下させることなく、持久力を高めることができるか可能性を示した。最近では、このような食事法は高齢期における脳疾患の予防等にも有効であることが示唆されているという。これらの研究は有名サッカー選手との対談からヒントを得たものであり、今後ともスポーツ選手との関係を密にすることにより、スポーツパフォーマンスの向上さらに、スポーツ競技力・健康増進の基礎研究を行っていきたいという言葉で講義を終わられた。

(ニュース)20220602-1

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