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2014/06/19 「運動生理・生化学特論」で早稲田大学スポーツ科学学術院 助教 東田先生の「エネルギー代謝に関する基礎と最新情報」の講義がありました。


2014年6193限目:「運動生理・生化学特論」に早稲田大学 スポーツ科学学術院 助教 東田一彦先生を外部講師として「エネルギー代謝に関する基礎と最新情報」について授業をして頂きました。エネルギー代謝は運動・健康科学にとって重要な学問分野であるため、研究が盛んに行われていますが、その研究の一部をわかり易く紹介して頂きました。

授業内容としては、普段摂取する食事を制限するカロリー制限は寿命を延ばす効果があるのか?について説明がありました。摂取するカロリーを減らすことは、体重および体脂肪が減少するだけでなく、血中脂質、血圧などを低下させる効果があることから、寿命の延伸に関与する可能性があります。動物実験においても同様のデータが報告されています。ヒトに近いチンパンジーを対象とした研究からは、「カロリー制限は寿命を延ばす」、という報告と、「寿命を延ばす効果はない」、といった結果の異なる研究報告があります。そのため、カロリー制限が本当に寿命を延ばすか否かは、まだはっきりとはしていないため議論の余地はありますが、カロリー制限はメタボ予防としてだけでなく、アンチエイジングの視点からも関心が寄せられています。

 また、摂取カロリー制限とエネルギー代謝に関する説明もありました。カロリー制限にはいくつかの方法があり、毎日の摂取カロリーを少し減らす方法や、一日おきに摂食と絶食を繰り返す間欠的絶食によるカロリー制限法などがあります。毎日の摂取カロリーを少し減らした(30%のカロリー制限)場合では、内臓脂肪の減少と骨格筋のインスリン感受性の亢進といった効果が認められましたが、間欠的絶食の場合では、内臓脂肪の減少は認められますが、骨格筋のインスリン感受性は改善せず、逆に悪くなることが判明しました。同じ摂取カロリーを制限するという目的であっても、カロリー制限の方法が異なると減量による効果も異なることが最近明らかにされています。

さらに、運動とエネルギー代謝に関する説明もありました。習慣的な運動は体脂肪を減させる効果がありますが、寿命を延ばす効果はありません。しかしながら、血中脂質、血圧、内臓脂肪などを減らすことで生活習慣に起因する病気の発症を低下させ、平均寿命を延長することが研究成果により報告されています。特に、運動は糖尿病予防に効果的であり、そのメカニズムとして、血糖を骨格筋に取り込むタンパク質GLUT4が増加したためだと考えられています。

エネルギー摂取と代謝の両方の観点からの情報も含め、スポーツ健康科学を学ぶ学生にとって有益な情報が盛りだくさんでした。


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