2014/07/17 キャリア形成科目「スポーツ健康科学セミナーⅡ」でアンダーアーマーのライセンシー/株式会社ドーム取締役マーケティング本部長 高下泰幸氏による「スポーツが最適化する成熟国家『日本』」の講義がありました。
2014年7月17日のキャリア形成科目「スポーツ健康科学セミナーⅡ」において、アンダーアーマーのライセンシーで、近年、成長著しい株式会社ドーム取締役マーケティング本部長の高下泰幸氏に、「スポーツが最適化する成熟国家『日本』」と題する特別講義をしていただいきました。
株式会社ドームの社名は、"Dedicated Organization Motivated to Excel"(自らの意志に基づいて、最上を目指し献身する組織)というフレーズの頭文字に由来し、企業理念として掲げられている「社会価値の創造」には、「スポーツを通じて社会を豊かにする」という想いが込められています。
高下さんのお話は、私たちが株式会社ドームに対して抱く「アンダーアーマーの製品を取り扱うスポーツ用品メーカー」というイメージを刷新するような内容で、「スポーツが最適化する成熟国家『日本』」という演題のように、企業価値を創造するために、既存事業にとらわれることなく、ビジョンを描き、それを実現するための戦略と事業化が重要であること、また想いを抱く企業の可能性は無限大であることを感じさせてくれるような内容でした。
高下さんは、成熟国家におけるスポーツの意義として、「内需拡大」「人材育成」「健康増進」の3つのキーワードを挙げ、具体的なデータや事例に基づき、話を進められました。
例えば、「内需拡大」では、日米の産業規模を事例に取り上げられ、自動車大国アメリカに対して、我が国の自動車メーカーは、企業努力の末、産業規模をアメリカの2.5分の1にまでその差を縮めたにもかかわらず、スポーツ産業は、プロスポーツビジネス、スポーツ用品などを合わせてもわずか4兆円程度で、アメリカの10分の1の市場規模に留まっており、この分野の事業化はまだまだ未開拓であることを指摘されました。
また「人材育成」に関しては、アメリカのCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)の95%が高校時代にアスリートとして、日々、競技スポーツに励んでいたことを事例に取り上げられ、「文武」のいずれか一方ではなく、「文武両道」に手掛けることが、日本社会を再生する手がかりであると述べられました。
そして、「健康増進」というキーワードでは、消費税をはじめとした増税の焦点でもある「社会保障」に着目し、30兆円を上回る医療費を削減することがスポーツによって可能になると述べられました。特に、この医療費のうちの4兆円が生活習慣病に起因していることと、またアメリカの肥満に関するデータを示し、運動習慣のある子どもと運動習慣のない子どもとでは、年間30万円の医療費格差が生じていることなどを事例に取り上げ、スポーツを通じて健康増進に手掛けることは、人々の日々の暮らしを豊かにするだけでなく、日本が健全な国家を維持するためにも重要な問題であると指摘されました。
講演では、このような3つのキーワードを実現する具体的なアクションプランについても紹介されました。例えば、都市規模が比較的類似しているオハイオ州クリーブランドの事例を徳島に、またアリゾナ州フェニックスの事例を沖縄に当てはめ、「スタジアム運営を通じた都市再開発」についてお話しされました。
またJOC(日本オリンピック委員会)、日本体育協会、日本スポーツ振興センターといったスポーツ組織の一元化や、USOC(全米オリンピック委員会)の全収入の約6割が事業収入であるのに対し、JOCの全収入の約4割が国費による補助金であることを事例に取り上げ、「スポーツ行政の大胆な改革」、つまり、スポーツ行政の民営化が必要であることを主張されました。
高下さんは、まだまだ未開拓であるスポーツ産業の発展のためには、日本人の強みをもっと活かす必要があると主張されました。その強みとは、本質を捉えた上で、それを実現し、カタチに変えるための「勇気」を持ち備えていること、つまり、日本人がこれまで成し遂げてきた成果は、"Copy and Paste"ではなく、進化と価値の創造を前提とした"Copy and Improve"という優れた能力に裏づけられていたことを忘れてはならないと述べられました。