【50周年記念学術企画】 映画『産土』上映会と監督ティーチインを開催しました!

Posted on 2015.12.04

11月7日(土)立命館大学朱雀キャンパスにて、日本各地
の農山村地域を国内外の映像作家が撮ったユニークなド
キュメンタリー映画『産土』を上映し、同映画の監督で
ある長岡参氏、そして、同映画の字幕通訳を務めた田中
クレア氏のお二人をお招きしてのティーチインを開催し
ました。この映画を手がかりに、また、視野を国際的に
も広げつつ、お二人からのトークを手がかりに、映画製
作の経緯や背景、カナダ上映時のエピソードを交えつつ、
日本の農山村地域の課題、可能性などについてお話しい
ただき、ディスカッションを行いました。

本企画実施のねらいは、端的には、過疎や限界集落問題
といった視点から捉えられることの多い農山村地域の今
をどのように理解し、また、その未来をいかに展望しう
るのか、それを映画およびティーチインを手がかりに考
えていく機会をもつことにありました。本学部の学生・
院生、教職員、他学部・他大学の教員、そして校友を含
めた一般の方々の参加を得ることができ、全体として30
名ほど集まりました。
成果としては、映画『産土』の上映を通して、農山村地
域の多様な今を知りえたことがまず挙げられるでしょう。
廃村や限界集落化した地域から、給食への食材提供によ
る地産地消の取り組みをしている地域までが取り上げら
れ、一口に「農山村」あるいは「田舎」とはいっても、
その実情が多様なこと、また、地域固有の文化が地域生
活に息づいていることも知ることができました。
また、ティーチインにおいて、長岡監督や田中氏からの
説明によって、映像作家の視点からの農山村地域の見方
について理解が深まったこともまた成果としてあげられ
るでしょう。この映画は、フィクションとしての農山村
ではなく、リアルな農山村の姿にフィールドワーク的な
手法で迫るところにねらいがあったということ、都市民、
よそ者、若者の視点が反映されていること、撮影や編集
の過程で、作家の国民性の違いと、国を超えて農山村問
題の共通性が強く意識されるようになったこと、などが
話題にされました。

これらの論点は、フロアとのやり取りのなかでも広げら
れ、私たちが農山村問題をフィクション的に受け取るの
ではなく、リアルな問題として迫っていくための立ち位
置のありかた、手法のあり方について意見交換がなされ
ました。その他、映像という手法が農山村地域課題の単
なる記録だけでなく、むしろ問題提起や解決に向けて持
ちうる可能性についても議論されました。
上記のような成果が得られた上映会でありましたが、印
象に残ったのは、映像作品の持つ問題提起の性格であり、
このことが問題解決に着目しつつある社会学にとって重
要な意味を持ちうるかもしれない、という点です。今後
さらに映像作品の上映や映像作家たちとの対話を継続し
ていき、その問題提起を深め、共有したりしていければ
と思います。


文責:現代社会専攻 高嶋正晴教授



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