「withコロナ」を踏まえたスポーツ社会専攻の問題解決型学習(Project Based Learning: PBL)

Posted on 2022.11.04

 スポーツ社会専攻では、余暇・スポーツを手掛かりに社会問題の発見・解決を志向し、スポーツを手段・媒体と捉えて、現代社会の諸問題を発見・解決するプロジェクト型の学び=(Project Based Learning: PBL)を行ってきました。特に、スポーツ共生社会プロジェクトでは、毎年1回生を対象に初年時教育として京都市障害者スポーツセンターで行われるパラアーティスティックスイミング(PAS)のイベントの運営に携わってきました。 パラリンピックとは異なる障害のある人とない人との共演は、スポーツを通じた社会参加やインクルージョン(包摂)の在り方を学ぶ貴重な機会になっていました。しかし、2020年のコロナ禍以降、スポーツの抑制状況を背景に、PBLを通した学びの機会は著しく滞りました。とりわけ、小規模なスポーツイベントは、再開しても無観客や規模の縮小等「withコロナ」に対応した形式での実施を余儀なくされています。このような状況を背景に、スポーツ社会専攻では3年ぶりにPBLを再開したので、報告したいと思います。

1. 京都府立特別支援学校スポーツ交流事業プロジェクト


 京都府立特別支援学校校長会より「withコロナ」を踏まえて、これまで府下の特別支援学校の生徒が一か所に集って開催していたスポーツ交流事業を、京都北部①舞鶴支援学校、京都中部②八幡支援学校、京都南部③宇治支援学校の3か所で分散開催したいとの申し出がありました。また、交流会を主宰する校長会は、これを機会に交流会に参画し難かった中度・重度の障害のある生徒も巻き込んだ地域連携型交流事業を開催したいとの発想を持っていました。そこで、スポーツ社会専攻では、6月に有志を募って「京都府立特別支援学校スポーツ交流事業プロジェクト」を立ち上げ、支援学校の生徒が楽しめるチャレンジスポーツを企画しました。さらに、開催地の舞鶴市は、京都市内からアクセスが悪く、周囲に大学が存在していないことを勘案して、舞鶴支援学校の交流会参画を目指して「校友会未来人財育成基金」の助成を受けることとしました。

 10月1日の支援学校スポーツ交流会開催には、スポーツ社会専攻学生16名と教員2名、大学院生1名、文学部学生1名、理工学部学生1名が参加しました。早朝からのバス移動に備えて、前日は全員が衣笠セミナーハウスに宿泊し、入念なミーティングを行いました。舞鶴支援学校到着後は、開会式前に先生方から現地説明を受け、実際の交流会では、先生方のリードの後に学生がイニシアチブをとりながら、考案したチャレンジスポーツを通して、支援学校の生徒と交流しました。支援学校の先生方の対応を参考にしながら、自分たちと年齢が近い障害のある人に対する接し方を実践的に学んだことは、とても有意義であったと感じます。プロジェクトの中心メンバーは「校友会未来人財育成基金の助成申請は苦労したが、学部や学年を超えてメンバーと舞鶴市まで出向いて支援学校の生徒と交流できたことが嬉しかった。また、『ポスト2020』や『withコロナ』を踏まえて、障害のある人の地域での「包摂」を考える機会になった」とコメントしていました。また、参加メンバーの由里和葉さん(スポーツ社会専攻3回生)は、「コロナ禍で大学生活が始まったので、自分から積極的に人と交流する機会を作っていかなければならないと感じています。交流を通して私の方が生徒たちからエネルギーをもらえました。楽しかった」と感想を伝えてくれました。スポーツ社会専攻に入学してから、初めてボランティアに参加した1回生、単独で参加した2回生を含めて、参加した学生はそれぞれ交流を楽しみつつ、スポーツを通した地域と特別支援学校の関係づくりを考える機会を得ていました。

 


2. 第30回パラアーティスティックスイミングフェスティバル


 10月2日、コロナ禍のために中止されていたパラアーティスティックスイミングフェスティバルが、京都市障害者スポーツセンターで3年ぶりに開催されました。フェスティバルは「withコロナ」への対応から、小規模なイベントにリニューアルされましたが、参加者はコロナ禍で練習の機会が限られる中で、表演の機会を得られたことが嬉しい様子でした。参加チーム数やボランティア数が制限される中にあっては、大会当日の流れには対応できても、障害者を受け入れるための練習場や控室の準備にかかるボランティアの人数が確保できないという課題がありました。今回のフェスティバルは、コロナの感染状況により急きょ開催が決定したこと、先に紹介した京都府立特別支援学校スポーツ交流事業の日程と被っていることを受けて、スポーツ社会専攻から上原航聖さん(大学院修士課程2回生)、政岡航大さん、大塚正樹さん(共にスポーツ社会専攻3回生)が準備に加わってくれました。またフェスティバル当日はスポーツ社会専攻教員1名がスタッフとして参加しました。政岡さん、大塚さんは「体育会に所属しているので時間に制約があり、ボランティアを実践する機会が限られますが、近場で参加できるのであれば時間を工夫して、積極的に関わりたい」と頼もしいコメントを残してくれました。主催者からの「若い人が準備に関わってくれると周囲のボランティアが活性化される。楽しく準備することができた」とのコメントから、フェスティバルに関わるスタッフが高齢化する中で、学生が参画する必要性をあらためて感じた次第です。

 

 今年4月に施行された第3期スポーツ基本計画は、① スポーツを「つくる/はぐくむ」、② 「あつまり」、スポーツを「ともに」行い、「つながり」を感じる、③ スポーツに「誰もがアクセス」できる、を目標として、ルールや用具を工夫してスポーツという文化に参画し難かった人も一緒にスポーツを楽しむことが重要であるとしています。スポーツ社会専攻のPBL学習は、時代に先駆けてこれら社会課題に挑んできた歴史を持っています。

文責:「京都府立特別支援学校スポーツ交流事業プロジェクト」
リーダー 大橋祐介(大学院:社会学研究科修士課程1回生)
産業社会学部スポーツ社会専攻 教授 金山千広

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