トロントでのフィールドワーク学習

Posted on 2017.02.20

 企画研究の授業で、2月1日から12日にかけて、昨年度と
同様に、カナダのトロントで多様な市民の共存について考
えるフィールドワーク学習を行いました。
 当地でのフィールドワークを今回もコーディネートして
いただいたのは、トロント大学のBill Mboutsiadis先生で、
学生たちはそのエネルギッシュかつ熱いご指導に感銘を受
けました。フィールドワークは、現存する最も古いトロン
ト市庁舎の跡地であるSt. Lawrence Marketでのカナダの
建国に関する講義と館内のツアーに始まり、学生の興味関
心に応じて、3つのテーマ(福祉に関する学習、移民に関す
る学習、LGBTQ2(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender,
Queer, and 2-spirited)に関する学習)に渡って、さまざ
まな学習活動を行いました。


<トロント大学でMboutsiadis先生を囲んで>

 福祉をテーマにした学習では、トロント大学での
G. Georgopoulos准教授によるカナダの福祉政策に関する
講義、野宿者のための福祉施設であるCovenant Houseや
Youth Without Shelterの職員の方による若者のホームレ
スの現状とその対策に関するレクチャー、日系カナダ人等を
対象に福祉サービスを提供しているJapanese Social Services
での高齢者向け福祉サービスに関する学習、民間非営利の
シンクタンクであるSocial Planning Toronto でのトロント
市における社会政策(ワーキングプア、子どもの貧困対策、
ソーシャルハウジング)のリサーチや市民・政治家に向け
ての政策提言とアドボカシーに関するレクチャー、トロン
ト市役所での福祉政策(シングルマザーや若者の貧困対策、
就職支援策、公共住宅の整備)に関するヒアリングなどを
行いました。
 移民に関するテーマ学習では、Japanese Canadian
Cultural Center(「日系文化会館」)で、第二次大戦中にカナ
ダで強制収容所に抑留された方に当時のお話を伺う機会を
得たほか、現地の法律事務所に所属する弁護士や職員の
方による移民受け入れのポイントシステムに関する講義、
トロント市役所での移民受け入れ政策に関するヒアリングな
どが行われました。
 また、LGBTQ2に関係した学習活動としては、現地でコミュ
ニティを組織する民間非営利団体のThe Villageの職員の
方によるPrideパレードを始めとするLGBTQ2に関する啓発
活動や地域計画の現状と課題に関する説明のほか、
LGBTQ2の若者支援団体のCentral Toronto Youth Services
で職員の方から教育支援活動や医療・福祉サービスなどへの
関係団体とのコーディネートの現状などに関する講話を受け、
LGBTQ2に関する歴史的文書やメディアなどを収集している
Canadian Lesbian and Gay Archivesでは司書の方による
LGBTQ2関連の資料収集に関するレクチャーと館内ツアーが
なされました。


<The Villageでのヒアリング>

 フィールドワークでは、こうした個別テーマ学習のほか、
オンタリオ州議会に出向き、そこでポルトガル系の移民で
初の州議会議員になったCristina Martinsさんにお会いし、
移民政策を始めとして、教育政策、住宅政策などの政策課
題とその政治的取組について説明を受ける機会を持ちまし
た。


<オンタリオ州議会での州議員Cristina Martinsさんとの懇談>

 加えて、トロントの街中では、学生たちは民間非営利の
福祉団体Tokens 4 Change が主催するホームレスの若者へ
の教育や就職活動のための募金活動に実際に参加したほか、
民間の福祉団体の協議会のOntario Coalition Against
Poverty による、野宿者のためのシェルターの増設を求める
トロント市長への街頭抗議を見学したりなど、上記のレク
チャーやヒアリングにとどまらず、学生自らがアクティブ
に問題を学ぶ機会も得ました。


<Ontario Coalition Against Povertyによる街頭抗議>



<Tokens 4 Changeによる地下鉄での募金活動>

 以上のようにフィールドワークで学習した内容は多岐に
渡りましたが、最終日に行われた学生による英語でのプレ
ゼンテーションでは、上記の3つのポイント(福祉制度、移
民の受け入れ、LGGTQ2の人々の受容)について、日本とカナ
ダの比較研究が報告されました。
 学生たちは、トロントにおける、多様なものを受け入れ
る寛容の精神、市民同士や市民と政治家との闊達な政治的
対話、教育・福祉・雇用・住宅に渡る包括的なサービスの
重要性などに大いに刺激を受け、日本における今後の課題
を考える貴重な機会を得たようでした。
 末筆ながら、今回のフィールドワークでご協力いただい
た関係機関の方々に厚くお礼申し上げます。

文責:人間福祉専攻 鎮目真人教授

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